冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「今だ」


物陰に身をひそめていた私は、兵が音に気を取られている間にこっそり玄関をすり抜けた。


「成功!」


コールに叱られそうだと思いながらも、今は外に出られたという喜びの方が勝っている。
やっぱり、自由になるって最高だ。


「あった。すごく立派!」


そして部屋のベランダから見えた大きな樫の木を見つけ、早速木登りを始める。

枝のついていない下の方は、少し離れたところから勢いをつけてジャンプ。


「あっ……」


手が滑り片手が離れたものの、そこは経験がものを言う。
足を幹にかけ、無事に枝の上に上がることができた。


そこからは何の苦労もなかった。
次々と枝に手をかけ移動し、上がっていく。


私は幼い頃から木登りが得意で、『まるでリスね』とよく母に言われていたものだ。
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