冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
門兵は突然姿を現した私が、おそらく王族の姫だとはにわかには信じられないのだろう。
呆然としている。

仕方ない。こんな姿で木から下りてきたんだもの。
でも……今は一刻一秒を争うの。


「早く。街が燃えてしまう。あの煙を見なさい」


さっきより太く黒い煙が空に上がっていくのが見える。


「は、はい。すぐに」

「私は馬を借ります」

「なにをなさる気で……」


私は門兵の質問に答えることなく馬小屋に行き、一番手前にいたつやつやの毛並みの茶褐色の馬にまたがった。


「その馬は、普通の者には乗りこなせま……」

「私は早くと言ってます!」

「は、はい」


今はつべこべ言っていられない。

少し大きな声を出すと、門兵はやっと王宮の中に走り込んでいった。


「よろしくね。行くわよ」


そして私は馬に声をかけ、手綱を引いた。
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