冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
そのままあの大きな門の前まで行くと……。


「王太子さまからの命で街に向かいます。ここを開けなさい」


誰かに命令するなんて、本当は苦手だ。
でもここで威厳を保たなければ、開けてもらえない気がした。

それは王太子さまが年上のランシャンに命令を下すのに似ているのかもしれない。


「し、しかし……」

「早くしなさい。街が燃えている」

「燃えて?」


私が指差した方角に煙が立ち上るのを見つけた数人の兵は、顔を見合わせ、門を開け始めた。

これほどあっさり門を開けてくれるとは思ってもいなかったけれど、とにかく今はあそこに駆け付け、消火を手伝わなければ。


樫の木の上から見たところでは、あのあたりは家が密集していて、早く消し止めなければ次々へと引火してしまう。

サノワでもそうしたことがよくあったので、火事の恐ろしさはわかっているつもりだ。
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