冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
そして私は、一目散に火の手の上がっている家に近づいた。


「誰か……助けて」


すると、家の前で泣き崩れる女がひとりいるのを見つけ、ハッとする。


「どうしたの? まだ誰か中にいるの?」

「あぁぁっ」


大きな声で尋ねても、その女は泣き声を上げるだけ。


「しっかりしなさい。いるの?」


私は仕方なくその女の頬をピシャリと叩いた。
泣いていても助からない。


「子供が……」


それを聞いた私は、近くで消火活動を始めた男のところに駆け寄り……。


「これ貸してください」


水の入った容器を借りると、頭からかぶった。


「なにするつもりだ?」

「一杯だけでは追いつきません。川から運ぶのです。何人もが等間隔に立ち、水の入った容器を隣の人に渡していって」


あの樫の木に登ったとき、少し離れたところに川の支流があるのを見つけた。
そこから運ぶしかない。
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