冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
私がそう指示をすると「わかった」と人が動き始めた。

あとはこの人たちに任せて……私は燃えている家の周りを回り、比較的火の勢いの弱い場所を見つけ、意を決して飛びこんだ。


「誰か、誰かいる?」


そして大声を張り上げると「助けて」という男の子のか細い声がする。
バチバチという激しい炎の音にかき消されそうなその声は、何度も「熱いよー」と訴えてくる。

私は燃え落ちた柱をよけながら、その声の方向に足を向けた。


「いた!」


少し中に入っていくと、うずくまって泣いている男の子を見つけ、すぐさま手を引き元来た方向を目指す。


「今は泣かない。必ず助ける」


こういうときは、落ち着くのが一番。

サノワでも何度も火事を経験し、そのたびに消火を手伝ってきた私は、自分を奮い立たせるためにそう言い聞かせた。
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