冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
どうして王太子さまが謝るの?

私は首を振った。

あれは私が勝手にしたこと。
それなのに、王太子さま直々にあの火の中を助けに来てくれるなんて思ってもいなかった。

あのときは夢中で少しも怖くはなかったけれど、一歩間違えば死んでいた。
そんなことを考えると背筋が凍る。


泣くつもりなんて少しもなかったのに、目尻からポロリと涙がこぼれてしまった。


「リリアーヌ、もう大丈夫だ。泣かなくていい」


するとその涙に気づいた彼が、そっと指で涙を拭い、私の手を握る。


「怖ければここにいてやる」


そんな。王太子ともあろう方に看病してもらうわけにはいかないわ。


私が『大丈夫です』という意味で首を振ると、「俺が心配なんだ」と予想外の言葉が返ってきた。


「男の子は助かった。リリアーヌのおかげで、少しやけどをしただけで済んだぞ」
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