冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
でも、腰に刺してある短剣に気がついた。
そして、王宮の中でこうしてくつろいでいる時間でも、手放せないのだと知った。

私がその剣をじっと見つめていると、彼は剣を腰から抜き、ベッドの頭の上に置く。


「どうやらリリアーヌは嫌いなようだが。身を守るために必要なものだ。安心しろ。この剣では誰も殺めておらぬ」


王太子さまの気遣いに、いちいち心が揺れる。

やっぱり、少しも怖くなんてない。

ユノヘスに来るなり、バスチューに剣を向けた彼のことを、どこかで恐れていた。
でも、大丈夫。
それはランシャンに命令するときと同じように、威厳を保つためにあえてそうしているのだ。


私の隣に入ってきた王太子さまは、とても長い睫毛をしている。
整った顔立ちではあるけれど、剣を持つとその目はキリリと鋭くなり、眉は上がる。


「リリアーヌ」
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