愛してるって意味
とはいえ、校了というものがある限り私達編集者に『クリスマス』と言うなの休みはない。
机のうえに山盛りになった資料の隙間をぬって肘をつき大きなため息をつく。


「はぁ…今年もクリスマスもへったくれもねぇな。」


愚痴をポツリとボヤく。
それが聞こえたのか隣の席の同期編集、望月茉莉花がどんよりした顔をしてこちらを向いた。


「杏子、この仕事今日中に片付けて明日合コンいくよ。もう決めたから!」
「あぁ、合コンね………合コン?!」


カタカタとキーボードを打つ手が止まる。


「いや、聞いてない!てかいつからきめてたの?!」
「えっと、…昨日?笑」


この子はいつもそう。
幼なじみでもある彼女は私が行くかと聞かれて行かないと答えることを分かっている。
だからこうして強制的に参加させられるのだ。


「だって杏子、彼氏出来てもすぐ別れて結局おひとり様決め込むでしょ?もうアラサーだよ?私達そろそろ結婚とか考えないと。」


手が止まることなく喋り続ける茉莉花。
これで仕事にもミスがほとんど無い。
彼女の抜かり無さにはいつも驚きを通り越して尊敬する。

こうして二人して鬼の様に仕事を片付け、帰宅するのであった。


『明日19時に待ち合わせだからね!遅刻しない様に!あとオシャレもして来るように!』


茉莉花の言葉が頭の中を巡る。


「オシャレっていってもなぁ」


そんな疲れた頭と身体で家に着いた私はそのまま眠りに着いたのであった。


次の日、起きると時計は夕方17時を回っていた。
仕事が休みだったのが幸いだったが、明らかに寝過した。


「やばい。」


すぐにお風呂に入り準備をする。
正直期待はしてないが、茉莉花の顔もあるしそれなりの格好をして行かなければ。

そうして私は唯一友達の結婚式に着ていった紺色のワンピースを来て、普段履かない様なヒールを履き、きちんとメイクをして待ち合わせ場所へと向かった。
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