キミゾラ
そんなある日、恭は卒園式の日、突如当時から流行っていたインフルエンザを患った。


晴れ着姿を着られない事と、友達と会えない事にショックを抱えた彼は、幼心にとても苦しい思いをした。両親も、つきっきりで看病をした。


心のキャンパスに、真っ黒な炭が混入して闇と化したような気分のまま、恭は小学生となったのであった。


完治したその後日、辺りが桜一色の小学校を初めて見た時、恭の一言は、幼心を取り戻したかのようにこう言った。

「きれい……さくらいっぱいだぁ……」

彼の心に春が来ていた。そして、空には細くて真っ白な飛行機雲が描かれていた。まるで、一筋の光が恭の胸にまっすぐ差し込んだように一直線に。
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