星の涙
「なに?」

「なんでもないって」

先に立って歩きだした。その後ろ姿がスキップでも踏みそうに楽しげに見えた。

「?」

わけがわからず見ていると、颯太くんが手招きする。

「ほら、いくぞ」 

「あ、うん」

わたしは颯太くんを追いかけながら、頭の中は疑問符でいっぱいだった。

なんだったんだろう、あのニヤニヤ笑いは……。



参道からは駅まで緑道が続いていく。いつも夜はそれほど人通りのない緑道だけれど、今日はたくさんの人でにぎわっていた。そんないつもと違う雰囲気のなか、わたしたちはのんびりと歩いていた。

「どっちあげようかな。えれなは出目金と普通の金魚、どっちがいいかな」

ふたつの袋を見比べながら、歩いているわたしに颯太くんが言った。

「ほんとに仲いいな、ふたり」

「幼稚園の頃からの幼なじみだから」

「でも高校まで一緒って意外と珍しいな」

本当は受験のとき、担任からわたしたちは別の高校をすすめられた。えれなは私立の女子校で、わたしは今通っているちょっと有名な公立の進学校。うちの高校を受けるにはえれなは偏差値が足りなかった。
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