星の涙
わたしは図書室の窓の前にたち、そこから見える校庭を見下ろしていた。

午後四時。部活のある子はそれぞれの部活に、部活のない子たちはもうすでに学校を出ていて、ぽっかりと人気がなくなる時間だ。
太陽が少し傾いて蜂蜜色の光があたりを満たしている。

校庭を取り囲むように植えられた桜はもうだいぶ散ってしまって、葉桜になりかけていた。そのピンクからグリーンへの微妙なグラデーションがなんだかとても可愛くて、わたしはスマホを取り出すと、横向きに構えた。

そのとき、さーっと風がふいて、残り少ない花びらが風にさらわれ、ふわりと舞いあがった。

「わー」

わたしは思わず小さく叫ぶ。

こういう神様がくれた贈り物のような一瞬を最高な形で残したくて、わたしはあわてて、シャッターをきった。


カシャ、カシャ、カシャ。

< 2 / 292 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop