星の涙
第二章 近づく距離
なんでこんなことしてるんだろう…。

日曜日、わたしは颯太くんとふたりで近くのショッピングモールの中にある手芸店にいた。応援団の衣装を作るための材料を買いにきたのだ。

いくら材料の買い出しとはいえ、颯太くんとふたりきりで出かけることになるなんて思ってもいなかった。前を歩く颯太くんの背中を、そわそわ落ち着かない気持ちで着いて行く。

日曜日の午前中のショッピングモールは賑わっていた。小さな子供を連れた家族連れがたくさんいて、人の動きが忙しい。走り回る男の子にぶつからないようにしながら歩くだけで、なんだか疲れてしまうほどだ。
とはいえ、手芸店にはそれほど人はいない。いても、女の人たちばかりで、そんな中でひょろりと背の高い颯太くんはひとりういていた。

わたしはなんだか気まずい気持ちだったけど、颯太くんはなんとも思ってないみたいで鼻歌なんかうたいながら布を見ている。

不思議な男の子だなって、颯太くんを見ながら思う。ふつう、女の人ばかりで男の子が自分だけしかいないような空間にいたら、もう少し小さくなったりおどおどしたりしそうなものだけど、全然そんな素振りも見せない。

どんなときも、どこにいても、自然でリラックスして見える。ここにいて当たり前、なんなら、しょっちゅう来てますけど、何か? と言いだしそうなほどだ。

わたしとは心の持ち方が全然違うんだなあと改めて思う。
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