一輪の花を君に。
「それさ…恋なんじゃないか?

いわゆる、一目惚れしたんじゃないか?どっちにしろ、誠がそこまで言うなら俺は応援する。でも、美空ちゃんの意見もちゃんと尊重して、美空ちゃんに今後どうしたいか決めてもらうんだからな?


決して強要したりしたらダメだからな?」






「分かってる。強要なんてしない。」





「それなら、大丈夫か。男として1人の医者としてしっかり美空ちゃんを守っていくんだぞ?」





「もちろんだよ。」





「あとそれから、今入院している部屋は美空ちゃんのために、開けておくことにしたんだ。七瀬君は可愛い俺の教え子だから、誠に連絡を受けたって聞いてから、ずっと開けておいた。きっと入院は、嫌がってると思うんだ。だから、容態が安定してきたら、すぐに退院させるな。」





「ありがとう、親父。」




「いいんだよ。気が早いけど、美空ちゃんは俺達の家族になるかもしれないんだから。そうじゃなくても、大切な患者さんの1人なんだから、ここでできる最高の治療を提供できるようにしていくよ。」




「本当、頭上がらないよ。あっ、それから退院するとなったら、外来の診察が終わってから施設に美空の様子を見に行ってもいいかな?」




「いいよ、てか行ってあげなさい。美空ちゃんとちゃんと打ち解け合えるためなら、許可するよ。」





「ありがとう。」





「それにしても…本当に珍しいな…。(今まで、誠がこんなにも感情移入したことがあっただろうか。むしろ…女の子に夢中になるなんて。)」





「何か言った?」





「いや。何でもない。」




それから、俺は美空の様子を見に行った。





昼間、あんなに聞こえていた喘鳴が、嘘のように落ち着いて、聞こえなくなっていた。





まあ、気持ち的には昼間と何ら変わりがない。





やっぱり俺のことを怖がってしまう。





でも、俺は美空を信じることに決めた。





美空のそばにいれるなら、何でもしたい。





たとえ、君に拒否されても、そう簡単になんて引き下がれない。




今日は、退院出来ることを美空と、お見舞いに来ていた七瀬先生や、千鶴先生に伝えてから、俺は美空の病室を後にした。
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