一輪の花を君に。
「七瀬先生、私。皆に話します。」



「え?」



「もう、隠すのは疲れた。」



「美空…。」




そう。



私のために、嘘を重ねる先生達を見ていることも、本当はずっとずっと辛かった。




私の身体が丈夫じゃないってことしか、知らない香音。





「ちょっと待って?美空、どういうこと?」





「…香音、私今まで嘘をついていたの。」





「嘘?」





「うん。」





「ごめん、本当は知ってた…。美空、私が見抜けないとでも思ったの?」




私は、香音の言葉に驚きを隠せなかった。





どうして!?





「美空と同じ部屋で、気付かないとでも思う?美空が、私でも絶対に気付くと思う。美空…本当はただの風邪じゃないんでしょう?」





「…うん。」





「全く。どうして美空からもっと早く話してくれなかったの?」





「…皆に、心配かけると思ったから。それに、私が病気だって知ったら、気を遣うと思って。」






「はぁ…。馬鹿だな、美空は。」




香音は、呆れたようにため息をついた。





「一緒に暮らして、気を遣う関係なんて疲れるだけでしょ?美空に、病気があるから気を遣うとか、私は絶対にしない。美空は、美空でしょう?私は、美空だから気を遣わないの。悪い意味じゃないよ?それだけ私は、美空に心を許せるの。美空と一緒にいると私は落ち着くの。」





「美空、香音はちゃんと分かっていてくれたみたいだね。」





「香音。」





私は、香音に抱きついた。





嬉しくて、涙が止まらなかった。




「よしよし、そんなに泣くと可愛い顔が台無しになるよ?」





「うるさいな、可愛くないからいいの!」





「七瀬先生、美空はやっぱり、無自覚ですね。こんな可愛いのに、自覚がないから男に襲われないか心配ですよ。」





「本当ね、気を抜いたら襲っちゃいそうで怖いわよ。」




「七瀬先生まで!」




「泣いたり怒ったりするなんて、私初めて見た
。美空も、こんなに感情的になるんだね。」





「香音も、初めてだったのね。」




「笑ってる顔ですら、あんまり見たことないんですよ?あー、私今感動して泣きそう。」




「香音。あのさ、話を戻してもいい?」





私は、ゆっくり呼吸を整えてから、





「私のことって、大翔や翔太、理人も知ってるの?」




「あの2人は知らないけど、大翔はどうかな。」





「大翔?」




「大翔、美空のお見舞いに行ったんでしょう?それなら、もしかして気づいてる可能性はあると思うよ。ただの風邪で半日の入院にはならないでしょ?」





「そっか…。」
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