一輪の花を君に。
ーside中森ー

七瀬先生が、部屋を後にしてから美空はずっと俯いたままで、顔をあげる気配がない。



「美空。」



「何でしょう…。」




「美空は、いつもどんな事をしている時が楽しい?」



とりあえず、美空が好きなことを聞いてみた。




美空が好きなことを知ることで、何か分かる気がした。




美空と距離を縮めるヒントが、そこにあるのかもしれない。





「…特には。」




「そっか…。」




やっぱり、そんなすぐに教えてくれるはずがないよな。




俺が美空のことを名前で呼んでいることを受け入れてくれているんだろうけど、全てを分かろうとすることは無理だし、美空も心を開いてくれるわけでもないよな。




「あの…。」




今度は、美空から問いかけた。




「ん?」




「…先生は、私のこと…その、どこまで知ってるの?」





「…俺は、美空の病気のことと過去に何があったのかある程度は聞いた。でも、そこまで詳しくは何も聞いていない。七瀬先生は、ちゃんと教えてくれたんだけど、俺は美空の口からもちゃんと聞きたいんだ。だから、心を開いてくれることを、俺は信じてるよ。」




「そうですか。」





美空は、それだけ言うと窓から見える空を眺めていた。




君の綺麗な横顔は、ついうっとりしてしまう。




だけど…どこかやっぱり寂しそうで。




いてもたってもいられず、俺は美空の隣に座った。





「なに!」



「綺麗な横顔だったから、つい。」




「いい加減にして。」




美空はそう言ってから、部屋を後にしようとしたところを俺は必死に止めた。




「もう!いい加減にして下さい。何ですか?私あなたに好かれるようなことしてないじゃないですか。」




「やっと、本当のこと言ってくれたね。」




「は?」




「美空、本心で話してくれてなかったから。本当の自分を見せてほしい。」





「何言ってんの…。」




その言葉を言い放ってから、美空は部屋を後にした。
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