一輪の花を君に。
「美空!」


リビングへ行くと、美空はソファーに眠りについていた。




「香音ちゃん、こんな遅くにどうしたの?」




「美空が、発作起こしたから心配になって。」





「大丈夫だよ。喘鳴は少しあるけど発作は治まったからもう大丈夫。もう遅いし寒いから部屋に戻りな。美空も、ここだと寒いから部屋に運ぶね。」





美空を姫抱きにした時、中森先生は少しだけ険しい顔をした。




「先生?」




「えっ?」




「さっき、険しい顔をしたから。」





「あっ、いや何でもない。」





そう言いながらも、心配そうに美空を見る中森先生を見たら、何が言いたいのかくらいすぐに分かるよ。






「最近は、あまり食べてなかったので。体重もかなり落ちてるかと。」





「よく分かったね。俺が思ってること。」





「私も、美空を見ててずっと思ってたんです。最近は、前よりも細くなったから心配で。」






「美空は、元々胃が小さいから大人1人前の半分も食べられればいい方なんだよね。だけど、食欲がかなり落ちているとなると、栄養の方が心配になってくるよな。」





どうして、そんなに知ってるんだろう。






「七瀬先生から聞いたんですか?」





「美空を観察してて分かった。水を飲む量にしても、少なかったし。それに、触診でだいたいのことは分かるからね。」





そうだったんだ。





そう言いながら、中森先生は美空をベッドに寝かせてから、掛け布団をかけた。




美空の髪を、丁寧に撫でながら微笑む中森先生を見ていると、美空のことが相当好きなことが分かる。




「中森先生…。もしかして美空にときめいてませんか?」





「はっ!?」




「その反応、図星ですね。」





「香音ちゃん?えっ!?いつから気付いてたの?」





「先生、美空に触れる時すごく表情が柔らかくなるから。そっちの方が、先生らしいですよ。」





「香音ちゃん?俺らしいって…?


病院にいる時の俺を知っているのか?」





「それはまだ、秘密です。」





中森先生は、気付いていないんだろうな。



覚えてないのかもしれない。




それほど、先生は人に興味がなかった。



私の名前すら、知らないよね。




今はまだ、話さないでおこう。




私が、中森先生の従姉妹の娘ってことを。
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