一輪の花を君に。
ーside中森ー

あれから、香音ちゃんに言われた言葉が気になって、ずっと思い出していた。



俺は、彼女との繋がりが何かあったのか。




思い当たる節は、従姉妹の娘ということ。





たしか、15年前に従姉妹の家は行ったっきりだったからな。





「先生、何の用ですか?」



俺は、気になって香音ちゃんのいる部屋へ向かった。




「ちょっといいかな?


昨日の香音ちゃんの言葉がどうも心に引っかかって。」






「あぁ。昨日のこと。」





少し、香音ちゃんはため息をついてから、廊下に出て来てくれて、一緒にリビングへと向かった。





「昨日のこと、ずっと気になって考えていたんだ。


それで、思い当たる節は俺の従姉妹の娘さんだってことだったんだけど…。



もしかして、香音ちゃん。」





「そうですよ?


てか…今更…。今更気付いたの?」





「ごめんな。まだ、あの頃は香音ちゃんは赤ちゃんだったからな。」





「それにしても、あんまりですよね。



それに、赤ちゃんの思い出が最後じゃありませんよ?



私が、こんなにはっきりと覚えてるんですから。」





「え?」





「親が亡くなった後、私が12歳だった時あなたはお通夜にもお葬式にも来なかった。」





「あの時は、緊急オペが立て続けで入ってしまったんだ。」





「オペって…。医者はいいですよね。そういう言い訳が通用するんですから。」






「香音ちゃん?」





「私が、親戚をたらい回しにされたこと知ってますか?」





「えっ?」





「まさか、中森先生知らないんですか?私は、両親を亡くしたあと、親戚中をたらい回しにされてたんです。あなたのお父さんまでも、私を受け入れてくれなかった。あなたは、あの時私をちらっと見ただけで、すぐにどこかへ行ってしまった。


だけど…。」






「だけど?」





「今は、感謝してるんです。」





「え?」





「私が、ここに預けられなかったら美空に会えなかった。美空だけじゃない。大翔や理人、翔太とも。ここの施設の皆とも会えてなかった。だから、感謝してます。


さっき、当たったように話したことは、ただ思い出してほしかったんです。私には、もう家族と呼べる人はいない。だけど、美空のことを見ている西森先生を見ていると、私の親戚と中森先生は違うって分かったんです。」





「香音ちゃん。



辛い思いをさせて悪かった。それに、香音ちゃんをすぐに、従姉妹の娘って思い出せなくて悪かった。だけど、香音ちゃんは俺の家族だよ。」





「美空もですよね。」





「えっ?」





「美空も、私の大切な家族です。」





「美空も…か。」



いずれかは、そうなったらいいって思ってる。



けど、まだ美空の心は俺の方に向いてないことも事実。




まだまだ、時間がかかりそうだな。




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