一輪の花を君に。
ーside美空ー


そろそろ、バイトの時間だけど七瀬先生が見つからない。



バイトに行く前は、必ず七瀬先生に報告をして診察を受けてから行かないといけない。




どこに行ったのかな。





「美空。」





「中森先生?」





「七瀬先生は、見つかったか?」




「それが、全然見つからなくて。」





「電話は?してみた?」





「何回か、かけてるんですけど…。」






どうしようかな…。




バイトまであと30分。




いつも、10分前には海の家へ行ってないといけない。






「美空!ごめんね、待たせたね。」





七瀬先生は、何か袋を持って帰ってきた。






「中森先生、美空のライブ一緒に見に行きましょう。」




「ライブ?」





「あ、中森先生にはまだ言ってなかった?」






「はい。」






「美空の趣味はギターってことは、言いましたよね。それで、美空は中学1年生の頃に海の家からスカウトを受けて。YouTubeに動画をアップしたら、再生数が急上昇したんです。それからは、皆に聞いてもらえることが嬉しくなってバイトとして、海の家でライブを週に3回行っているんです。」






「そうだったんですか。美空は、楽しくてギターのアルバイトをしていたんですね。」





「先生!それより、そろそろ行かないと。」






「あっ、そうだったね。聴診だけしちゃうからソファーに座っていてもらえる?」





「はい。」





私は、七瀬先生に言われた通りソファーに座った。





「よし。大丈夫そうだね。昨日よりは、顔色もよくなってきたから、頑張ってきな。」






「はい。」




私は、中森先生と七瀬先生に頭を下げてからギターを持って、海の家へと向かった。





「あっ!美空ちゃん。よかった。」





「櫻木さん、すみません。遅くなりました。」




「大丈夫だよ。今日のライブ時間は18時からだからよろしくね。」






「はい。こちらこそよろしくお願いします。」






櫻木茂(さくらぎ しげる)さんは、ここの店長でもあって、私をYouTubeで見つけてくれた人。





私が来てから、お客さんも増えたと言ってもらえて光栄だった。





「美空ちゃん、今日も頑張ってね。」





「はい。ありがとうございます。」






私に声をかけたのは、高校生のアルバイトの九条蓮。




この人の友達の5人もここでアルバイトをしている。





「蓮、お客さんのお会計をしてくれ。」






「はい。」






いつもこんな感じで、夕方の時間帯は混んでくる。





私も、ギターを持ってお客さんが誰もいない所へ向かいチューニングを始めた。
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