一輪の花を君に。
「美空ちゃん。」



「あっ、どうも。」



「蓮から、聞いたんだけど美空ちゃんももうすぐ施設から出ないといけないんだって?」





「はい。」





「そうか。何か、心配なことがあったらいつでも相談に乗るからね。」






「ありがとうございます。」





「うん。香音ちゃん達も、元気にしてるかな?」





「はい。変わりはないですよ。」





この人は、3年前に施設を出た。





望月日向(もちづき ひなた)





この人は、施設ではヤンキーだったのに今はとても真面目になっていたから、最初は全く気付かなかった。






「私、そろそろ行きますね。」






「あっ、もう10分前か。」






私は、望月さんとお客さんが待つ、浜辺へと向かった。




浜辺へ向かうと、七瀬先生と西森先生がいることに気付いた。




本当に来たんだ。





しかも、千華ちゃんや大翔達も来ている。





わざわざ皆を連れてくることなかったのに。





私は、深呼吸してからライブのスタートをきった。





ギターケースを開けておくと、時々お金を入れてくれる人がいる。





いつも通り、ギターケースを開けておいた。




それから、私は2時間に及ぶライブを終えた。





正直、体力の限界。





「美空ちゃん!?大丈夫?」




重い足取りで、店長の元へ向かうと私の異変に気づいた店長が、駆け寄って来てくれた。





「大丈夫です。今日も、ありがとうございました。」





言葉にならない声で、やっと声が発せているような状況だった。





「大丈夫じゃないでしょう。ちょっと座りな。水は?飲めそう?」





櫻木さんは、私を畳がある部屋へ連れて行ってくれた。






「櫻木さん、7番テーブルのお客様…って美空!?大丈夫?」





「大丈夫です。」




「どう見ても、大丈夫そうに見えないけど。


七瀬先生に、連絡しようか?」







「本当に…大丈夫ですから。」





「美空?俺はお前に無理はしてほしくないんだ。」





「もう、充分です。」






「えっ?」




私自身、この身体の弱さにはいい加減腹が立っていた。




こうやって、私の限界を皆に判断されることが嫌だった。




私は、限界を超えていきたいのに。
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