一輪の花を君に。
ーside美空ー


私は、朝の光に目を覚ました。




あれ、いつもと景色が違う。




白い天井に、淡いクリーム色のカーテン。





私…。





病院に、連れて行かれたんだった。






「美空、起きたか?」






「中森先生…。ずっとここに?」






「あぁ。それより、体調はどう?」






「大丈夫です。」






「全く、本当素直じゃないよな。具合悪そうだけど。」







「どうして、医者って見抜けるんですか?」







「…医者だからっていうのも、もちろんあるんだろうけど、美空の体調の変動は普段から美空傍にいないと、体調が悪いことに気づけないと思う。」






「そうですか。




あの、これ外してもいいですか?」







酸素マスクが苦しくて、私はそのマスクに手をかけていた、






「あっ、まだダメだよ。喘鳴だってあるんだし顔色だって悪いから。」






「どうでもいい…。」






発作で苦しんだり、恐怖感に襲われたり、皆に心配かけたり、私はこのマスクを外した時の苦しさなんかより、そっちの方が苦しいよ。






いっそのこと、みんなの記憶から私がいなくなればいい。






元々、私は1人で生きてきたんだから。






施設に入る前は、大人を信用してこなかった。






私を見てくれる大人がいなくなる。





ただ、それだけなんだから。






もう、私は1人で生きていく。






その強さは、身についているはずだから。






「美空。昨日は電車に乗って、どこに行くつもりだったんだ?」






「別に、行先はありません。」





とにかく、皆の目が届かないところに行きたかった。







「もし、皆に喘息のことで心配をかけてることが嫌なら、昨日美空がやった事の方がよっぽど心配だったんだよ。」







「説教ですか?」





「説教じゃない。



ただ、俺は美空が無事でいてくれて本当によかったって思ってる。大切な人を失わずにすんだ。家出を考えるくらい、何かに悩んでいるなら行動する前に、話してほしいよ。」






「悩んでる?」






「そうじゃないのか?」





「悩みというか…。




自分が嫌になっただけです。」
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