一輪の花を君に。
「失礼します。」



「あっ、七瀬先生。」




「美空、熱でもあるんですか?」





「いや。目を冷やしているだけです。」






「涙を、あなたに見せたんですか?」






「はい。」







「そうでしたか。徐々に、心を許してきた証ですね。美空の泣いた所は、私もまだ1回くらいしかないんです。長く一緒にいる私たちでさえ、最近見たことが珍しかったんです。



それだけ、西森先生を信用しているんですね。」






「そうなんでしょうか。」






「そうですよ。ましては、大人の男性に。」






「そう言ってもらえると、嬉しいですね。」





「これからも、美空のことをよろしくお願いします。」






「はい。もちろんです。」






「美空ー!」





「香音!」






「七瀬先生、美空は?」






「今眠ってるよ。」





「よかった。無事で本当によかった。


てか、こんなにぐっすり眠っている美空を見たの初めてかもしれない。」






「えっ?」





「美空、眠っていてもいつも苦しそうだったり何かに不安があるのか分からないけど、いつも思いつめた感じだったから。だから、こんなに穏やかに眠っている美空を見たのは久々かもしれない。」






「そうだったのか。」





夜になると急に不安になったり怖くなったりすることもあるよな。




過去に色んなことを抱えてるんだから。




それに、喘息だけじゃない疾患だってあるわけだしな。






「七瀬先生、美空の食事ってどうなってますか?」







「量としては、多くて4分の1食べられればいい方でしたね。最近は、2口程度しか食べられていなかったみたいで。」






「やっぱり、そうですよね。」





「低栄養に、低体重なんですよね。」






「はい。」





「私がついていながらも、食事の管理までは届かなくてすみませんでした。」







「仕方ないとは言えないですけど、たくさんの子供達がここにはいるわけで全員のことを把握しきれないってこともありますよね。」






「それを言い訳にすると限りありませんけど…疎かでした。」






「そんなに、自分を責めないでください。完璧な人間なんて、いないんですから。



少し、俺の方でも様子を見させてください。」






「お願いします。」





「はい。」
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