一輪の花を君に。
ーside美空ー


目が覚めると、辺りは真っ暗だった。




夜になると、急な不安が私を襲う。






やっぱり、この時間帯の病院は寂しくて嫌だな。





みんなの所に、戻りたいな。





幸い、西森先生は眠っている。




静かに、中森先生の手をどかしてから私は点滴台を転がしながら、私は外に出た。






なんだ。




私、まだこんなに動けるんじゃん。





医者は、いつでも大袈裟だよね。





まあ、訴訟とか起こされたらオーバーに話を盛るんだよね。






施設に帰ったら、七瀬先生に怒られるかな?






病院に、引き戻されるよね。




そんなことを考えながら、しばらく歩いていると





「美空!?」





後ろから声がして、私は振り返った。





「七瀬先生…。」






「こんな所で、どうしたの?」







「別に…。何も無いです。」







「それなら、病院に戻ろう?」







「それは…。嫌です。」







「どうして?」







言えなかった。





理由なんて話したら、七瀬先生はきっと呆れる。






病院の夜は、いつも不安でいっぱいだった。





そんなこと、知られたら先生に呆れられる。







「美空?」






「…。私は、いつまでこんな生活が続くんですか?
退院しても、発作が落ち着くなんて本当に一瞬で、すぐに入院になって…。


その繰り返し。」







「美空…。」






「先生?」





「ん?」







「私は、どうしたら強くなれますか?」






「強くならなくても…いいんじゃないかな?」






「えっ?」






「強くならなくてもいい。



素直な心が、大切なんだよ?」






「…素直な…心。」







そういえば、中森先生もそう言ってたよね?







そんなことを考えていると、車のライトでこちらへ向かって走って来ることが分かった。






「美空!」






「中森先生…。」






「寒かっただろ。」





中森先生は、私が病院を抜け出したことに対して、怒ることはしなかった。





怒るどころか、中森先生は私を毛布で優しく包み込んでくれた。







「中森先生、すみませんでした。


美空、明日朝1で皆とお見舞いに行くから、今日は中森先生と一緒に病院に戻りな?」







七瀬先生は、私が皆と会いたがっていたことが分かってくれていた。







「はい。」







「それでは、中森先生。美空をよろしくお願いします。」






「はい。」





私は、中森先生に肩を支えられながら助手席に乗せられた。
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