一輪の花を君に。
ーside美空ー



大翔から、中森先生が話があると聞いて、私は点滴台を転がしながら、先生達のいるカンファレンス室へ、大翔と一緒に向かった。





部屋に入ると、真剣な表情をしている先生達がいた。






まあ、なんとなく何言われるかは検討はつく。







私の身体は、私が1番分かっている。







呼吸だって、楽になった気がしないし、咳だっておさまってないんだから。







「中森先生。」






「美空、ちょっとそこに座ってくれるかな?」







中森先生に、そう言われ私は中森先生の隣に座った。





すると、中森先生は少し椅子を下げ私と直角になるような形に座り直した。






「大翔、ここに座りな。」






「はい。」








「美空。


治療経過のことなんだけど…」







「やっぱり。」






「えっ?」







中森先生は、驚いた表情で私を見つめた。





七瀬先生も大翔も、同じように驚いていた。







どうしてそんなに驚くのかな。






「治療の経過、よくなかったんですよね。」







「ああ。


やっぱり、自分でも前と比べて呼吸が苦しくなったり、咳が頻繁に出るようになったりしてたら分かるんだよな。」






そうだよ。





夜中に、何度か目を覚ました時に先生はずっと傍にいてくれた。






そのことで、どれだけ私が救われたことだろう。





「中森先生、通院はどれぐらいすればいいんですか?」







「できれば、週に3回で来て欲しい。



学校が終わった後とかでも、いいから。」






「分かりました。」







「美空、病院に行くなら俺も一緒に付き添うよ。


1人だと、心配だから。」






「大丈夫。



今までもずっと1人で通院してたんだから。




ありがとう、大翔。」






「分かった。」






「美空、辛かったら呼んでほしい。



呼んでくれたら、すぐにでも駆けつける。




不安な時、いつでもここにおいで。」







「中森先生とは、もう診察でしか会えないんですよね。」





そうだよね。




普通なら、そうだよ。



施設にまで、遊びに来てくれた中森先生。



少しの間だったけど、一緒に暮らしてきた。




やっぱり、中森先生に対して深入りしたらダメなんだ。





寂しい気持ちが、私を襲った。






「美空?」





気づいたら、涙が流れ出していた。






「美空?苦しいのか?」





中森先生は、優しく私の背中をさする。





けど、そうじゃない。





発作の苦しみなんかじゃない。






この気持ちは、一体何なんだろう。






中森先生が、そばにいてくれないと不安で仕方がない。






どうして?





医者だから?






でも。



七瀬先生に対しては、こんな気持ちになったことがない。





「違います…。」





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