柏木達也の憂い

そんなやり取りも忘れてた頃。

思わぬところで偶然出会った。


なんとなく気になってたこともあって、珍しく自分から誘っていた。

そこで過ごしたわずかな時間で彼女の印象が大きく変わった。

弟からの甘やかされっぷりとか、オフィスでの表情をみて周囲にチヤホヤされてる女の子なんだろうな、なんてイメージを勝手に持っていた。

だけど仕事の話をする姿は凛としていて一瞬、見とれてしまった。

「うちの会社にお飾り、なんて1人もいませんよ」

そう言い切る彼女の挑戦的な瞳は澄んでいて、こんな風に俺に意見をぶつけるやつなんて最近いなくて、新鮮だった。

「ごめん、バカにしたつもりじゃなかったんだ」

誤解してたことを謝ると、ちょっとおどけて空気をかえてくれて。

面白おかしく、なんで自分が“ニシユリ様”と呼ばれているかを話してくれる表情はほんとうに屈託がなくって。


なんて魅力的な子なんだろう。

久々にそんな気持ちを抱いた。

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