柏木達也の憂い



学生時代にちょっとしたコンペで入賞して、調子にのったまま大手の建築事務所に入った。

だけど、そんな学生時代に培った自信なんて通用しなくて・・・。

理想と現実のギャップに苦しんでた頃、手を差し伸べてくれたのは4つ年上の先輩だった。

その人は事務所の中でも若手の成長株と言われていて、チームで唯一の女性というのもあり、上からも目をかけられていた。

だけど同じクライアントを担当することがなかったので、あまりかかわることがなかった。


だけど、入社して1年が過ぎた頃。

「はぁ。やっぱり俺のデザインじゃ通用しないのかな」

小さ目の案件は自分がメインで任されるようになってから、俺の闇は深くなっていった。

クライアントからの要望を聞きながら、もっとこうだったらいいのに、という俺なりの提案を入れて設計を起こすようにしているのだが、それが全く通らない。

< 8 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop