柏木達也の憂い
「そこまでは求めてないから」
「これだと、コスト面が跳ねあがりすぎて無理ですよ」
「んー、面白いけど使い勝手悪そうだよね」
クライアントとの打合せでは、ダメだしのオンパレード。
そして結局は、俺じゃない誰かが描いても同じようになるようなデザインに落ち着いてしまう。
自分のデザインとか感覚には自信を持っていた。だけど、それが全く通用しない。
事務所で活躍している先輩は
「クライアント、ファースト。求められるもの作ってなんぼだよ」
と言って、誰が描いても同じようなデザインでいいと言う。
そんなことが続いて、正直俺はわからなくなっていた。
「俺がデザインする意味ってなんだろう?」
残業中、デスクでそう呟いていたら後ろから声が降ってきた。