メガネの王子様
*****


たくさんの衣装を持って教室へ帰って来ると、皆んながワーと集まって来て、それぞれ楽しそうに自分の衣装を選んでいく。

私と桐生は少し離れたところで皆んなの様子を見ていた。

こそっとバレないように隣に居る桐生の顔を見上げてみる。

モサッとした髪と眼鏡だけで、よくこの綺麗な顔を隠せてるなぁ…。

そもそも、なぜイケメンを隠したがるんだろう?

ひとりが好きな桐生にとって、女の子に囲まれるということは苦痛でしかないのかな?

私だったらモテ人生とても羨ましいけどなぁ…。

まぁ、イケメンが周りにバレて桐生にたくさんの女の子が集まってきたら…嫌なんだけどね。

はぁぁぁ…それにしても

なんで、こんな面倒な人を好きになってしまったんだろう。

強引で意地悪で二重人格で…………

でも、本当は優しくてーーーーーーーー

無意識に桐生の薄い唇が視界に入り、さっきの出来事を思い出す。

私…この綺麗な唇にキスされたんだ///

しかも、頬を含めて4回も…///

契約のキス、からかうような濃厚なキス、頬に触れるだけの消毒代わりのキス、そしてスリル満点のキス。

キスを重ねる度に私は桐生に惹かれていった。

ううん、初めから気になる存在だったんだ。

キスをすることが無くても、きっと私は桐生のことを好きになっていた。

今、思えば、同じクラスになって桐生の存在を知ってから無意識に彼の姿をいつだって目で追いかけていた。

イケメンだってことは全然気が付かなかったけどね。

ーーー桐生は私のこと…どう思っているんだろう?

嫌いだったらキスなんてしないよね?

桐生の気持ちが気になるっ。

でも…私の勘違いだったらと思うと怖くて聞けない。

私の反応が面白くて、ただ本当にからかってるだけなのかも知れない。

ねぇ?桐生は私のこと…どう思ってるの?




「神崎さん…さっきから僕、見つめられすぎて穴が開きそうなんですけど。」

桐生が私を見下ろし、フッと笑いながら言った。

「う、自惚れないでよねっ///桐生のことなんて見てないしっ。」

嘘です。ガン見してました。

「そうですか?それは残念です。」

ククッと肩を揺らしながら笑っている桐生。

また、からかわれたっ///

やっぱり、桐生は私をからかって遊んでるだけなんだ……。

膨らんだ期待が一気にしぼむ。

「私も衣装、選んでくるよ。」

なんだか気分の浮き沈みが激しくて桐生の隣は疲れる。

私は皆んなの輪の中に入って衣装を選ぶことにした。

「神崎さんは絶対にコレっ!」

そう何人かの男子に言われ衣装を押し付けられる。

特に着たい衣装もないし何でもいいや。

私は言われるがまま衣装を受け取った。



このときの私は、この衣装があんなことになるなんて思ってもいなかったんだーーー


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