メガネの王子様
*****


ガチャン……



清宮先輩を屋上に残し、扉を閉めて階段をトボトボと下りる。

消しても、消しても、頭の中に桐生の顔が散らつく。

なんで桐生?

あんな奴、どこがいいの?

からかわれてたんだよ、私。

何度も唇を奪われて、その度、ドキドキさせられて…

でも…ドキドキしてたのは私だけ。

桐生は私のことなんて、なんとも思ってない。

私の反応が面白くて楽しんでただけーーー

「契約のしるし」と言われてした1度目のキス。

始めは理不尽で腹が立った……

でも……2人だけの秘密が出来たことが、いつの間にか嬉しくなってて…

桐生が本当の姿を隠すには何か理由があるんだと思って、必死に庇ってきたのにーーー

私だけが桐生を守れるんだって思ってたのに…

全部、私の独りよがりだった。

分かってる。

全部、頭ではわかってるのに、気持ちがついてこない。

まだ、桐生のことが好きだって心が叫んでいて言うことをきいてくれない。

こんなに好きになってるなんて自分でも思ってなかった。

苦しくて、苦しくて、どうしたらいいのか分からないよ…

「いた…。」

胸がキューと締め付けられるように痛くて、私は胸に手を当てる。

熱くなっていた瞳から、ついにポロッと涙が落ちてしまった。


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