メガネの王子様
*****
遡ること4時間前
私は背中まである緩く巻いた髪を、軽く弾ませながら歩く。
太ももの真ん中くらいの長さに調節したスカートに、適度にたるませたハイソックス。
メンズサイズの大きめのカーディガン。
これが私のこだわり。
神崎 萌香(かんざき ほのか)。
どちらかというと、派手めのグループに属しているけど普通の高校2年生の女の子です。
友達が多い私は、朝から沢山の挨拶を交わしながら教室に入る。
私のクラスは2-Aで席は教室の1番後ろの窓側。
とても気に入ってるんだけど、10月の今はお天気が良い日はまだ暑いくらいなんだ。
暑いからカーテンを閉めようとしたら、廊下側の人に「寒い」って阻止されるんだよね。
廊下側といえばーーー
私と対角線上にいる廊下側の1番前の席のあいつ。
桐生 櫂(きりゅう かい)。
モサッとした髪に冴えない黒縁メガネのあいつ。
2年になって初めて同じクラスになったんだけど……なんか、いつもひとりで本を読んでるんだよね。
別に嫌われてるってわけでもないのに、いつもひとりでいる。
どちらかというと好きでひとりでいるって感じかな?
「なぁに?桐生なんて見ちゃって、恋でもしちゃったー?」
陽葵(ひまり)がニヤニヤしながら、空いている私の前の席に座った。
佐久川 陽葵(さくかわ ひまり)とは高校に入ってからの友達で、去年同じクラスでオリエンテーションの班が一緒になってから意気投合しちゃって、今となっては親友と言っても過言ではないほど仲が良いんだ。
陽葵は私と違ってとても家庭的な女の子。
お料理も上手で、お弁当は毎日自分で作って持ってきてるんだ。
見た目はボブの明るい茶髪で少し派手めだけど、すごく美人さんなんだ。
社会人の彼氏がいて、卒業したら結婚しようって言われてるんだって。
右の薬指に彼氏から貰った指輪を付けてるんだけど、凄く高価そうで彼氏は本気なんだって伝わってくる。
ーーーって今はそんな事どうでもいいの。
「バ、バカじゃないの!そんなわけないじゃんっっ///」
桐生のことなんて別になんとも思ってないのに、なぜか焦ってしまった。
「え、え、なにっ?神崎ってそーなの?」
健(けん)ちゃんまで寄ってきて私の隣の席に座る。
「だから違うって!あんなヤツ好きになるわけないじゃん!」
「だってー。良かったね、健ちゃん。」
「だ、黙れっ///陽葵っ。」
健ちゃんが勢いよく立ち上がり陽葵の口に手を当てた。
口を封じられモゴモゴしながら、陽葵は楽しそうに健ちゃんとじゃれ合っている。
健ちゃんこと町田 健人(まちだ けんと)も去年同じクラスで、陽葵の幼なじみってことで仲良くなった。
健ちゃんはスポーツマンでバスケがメチャクチャうまい。
もちろんバスケ部のエース。
少し明るめの髪でツンツン頭、ハリネズミみたいで可愛いんだ。
長身だしイケメンの部類に入るから、密かに人気があるみたい。
「…コホンッ、まぁ、あんな何考えてるか分からない男は神崎には似合わないよ///」
なぜかワザとらしく咳払いをしてから、少し赤い顔で健ちゃんが言った。
……何考えてるか分からない。
確かに分からないよね?
でも、桐生が優しい人だってことは知ってる。
荷物で両手が塞がっているとき、黙ってそっとドアを開けてあげること。
後ろの席の人が黒板を見にくそうにしていたら、深く椅子に座って前屈みになり座高を低くしてあげていること。
いつも誰にも気付かれないように優しく接してるんだよね。
「萌香、どうしたの?」
陽葵が私の顔を不思議そうに覗き込んできた。
「ううん、何でもないよ。」
私が笑顔で答えると、陽葵は「そっか」と言ってから「健ちゃん、ドンマイ」と健ちゃんの背中をさすっている。
しばらくして、チャイムが鳴り担任の先生が教室へ入ってきたので、それぞれ自席に戻って行った。
私は鞄から教科書を出し、机になおそうとすると、中に何か入っていたのに気付く。
なんだコレ?紙?
取り出してみると、小さく折りたたまれた紙だった。
とりあえず広げてみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
神崎 萌香 様
伝えたいことがあります。
今日の昼休みに校舎裏に来てください。
K.K
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
………えっ⁈
伝えたいことって…もしかして
ーーーーーっていうか、K.Kって⁉︎
え、え、えっ⁉︎
ひょっとして
桐生 櫂ーーーっっ⁇
遡ること4時間前
私は背中まである緩く巻いた髪を、軽く弾ませながら歩く。
太ももの真ん中くらいの長さに調節したスカートに、適度にたるませたハイソックス。
メンズサイズの大きめのカーディガン。
これが私のこだわり。
神崎 萌香(かんざき ほのか)。
どちらかというと、派手めのグループに属しているけど普通の高校2年生の女の子です。
友達が多い私は、朝から沢山の挨拶を交わしながら教室に入る。
私のクラスは2-Aで席は教室の1番後ろの窓側。
とても気に入ってるんだけど、10月の今はお天気が良い日はまだ暑いくらいなんだ。
暑いからカーテンを閉めようとしたら、廊下側の人に「寒い」って阻止されるんだよね。
廊下側といえばーーー
私と対角線上にいる廊下側の1番前の席のあいつ。
桐生 櫂(きりゅう かい)。
モサッとした髪に冴えない黒縁メガネのあいつ。
2年になって初めて同じクラスになったんだけど……なんか、いつもひとりで本を読んでるんだよね。
別に嫌われてるってわけでもないのに、いつもひとりでいる。
どちらかというと好きでひとりでいるって感じかな?
「なぁに?桐生なんて見ちゃって、恋でもしちゃったー?」
陽葵(ひまり)がニヤニヤしながら、空いている私の前の席に座った。
佐久川 陽葵(さくかわ ひまり)とは高校に入ってからの友達で、去年同じクラスでオリエンテーションの班が一緒になってから意気投合しちゃって、今となっては親友と言っても過言ではないほど仲が良いんだ。
陽葵は私と違ってとても家庭的な女の子。
お料理も上手で、お弁当は毎日自分で作って持ってきてるんだ。
見た目はボブの明るい茶髪で少し派手めだけど、すごく美人さんなんだ。
社会人の彼氏がいて、卒業したら結婚しようって言われてるんだって。
右の薬指に彼氏から貰った指輪を付けてるんだけど、凄く高価そうで彼氏は本気なんだって伝わってくる。
ーーーって今はそんな事どうでもいいの。
「バ、バカじゃないの!そんなわけないじゃんっっ///」
桐生のことなんて別になんとも思ってないのに、なぜか焦ってしまった。
「え、え、なにっ?神崎ってそーなの?」
健(けん)ちゃんまで寄ってきて私の隣の席に座る。
「だから違うって!あんなヤツ好きになるわけないじゃん!」
「だってー。良かったね、健ちゃん。」
「だ、黙れっ///陽葵っ。」
健ちゃんが勢いよく立ち上がり陽葵の口に手を当てた。
口を封じられモゴモゴしながら、陽葵は楽しそうに健ちゃんとじゃれ合っている。
健ちゃんこと町田 健人(まちだ けんと)も去年同じクラスで、陽葵の幼なじみってことで仲良くなった。
健ちゃんはスポーツマンでバスケがメチャクチャうまい。
もちろんバスケ部のエース。
少し明るめの髪でツンツン頭、ハリネズミみたいで可愛いんだ。
長身だしイケメンの部類に入るから、密かに人気があるみたい。
「…コホンッ、まぁ、あんな何考えてるか分からない男は神崎には似合わないよ///」
なぜかワザとらしく咳払いをしてから、少し赤い顔で健ちゃんが言った。
……何考えてるか分からない。
確かに分からないよね?
でも、桐生が優しい人だってことは知ってる。
荷物で両手が塞がっているとき、黙ってそっとドアを開けてあげること。
後ろの席の人が黒板を見にくそうにしていたら、深く椅子に座って前屈みになり座高を低くしてあげていること。
いつも誰にも気付かれないように優しく接してるんだよね。
「萌香、どうしたの?」
陽葵が私の顔を不思議そうに覗き込んできた。
「ううん、何でもないよ。」
私が笑顔で答えると、陽葵は「そっか」と言ってから「健ちゃん、ドンマイ」と健ちゃんの背中をさすっている。
しばらくして、チャイムが鳴り担任の先生が教室へ入ってきたので、それぞれ自席に戻って行った。
私は鞄から教科書を出し、机になおそうとすると、中に何か入っていたのに気付く。
なんだコレ?紙?
取り出してみると、小さく折りたたまれた紙だった。
とりあえず広げてみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
神崎 萌香 様
伝えたいことがあります。
今日の昼休みに校舎裏に来てください。
K.K
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………えっ⁈
伝えたいことって…もしかして
ーーーーーっていうか、K.Kって⁉︎
え、え、えっ⁉︎
ひょっとして
桐生 櫂ーーーっっ⁇