メガネの王子様
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文化祭最終日の今日も、俺はいつも通り校舎裏で本を読んでいた。
いつもは気の休まるこの場所も、今日はイライラするばかりだ。
原因はわかってる……………神崎 萌香だ。
神崎は俺とのキスで、今まで焦ったり赤面したりはあったけど、昨日のように反発することなんて無かった。
そのうえ、構うなとまで言いやがって…。
そもそも、神崎とキスをし始めたのはいつからだ?
俺は記憶をたどり始める。
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……そうだ、ずっと隠していた素顔を神崎に見られたあの日ーーー
俺は、なぜか「契約のしるし」と言って神崎にキスをした。
今でもあの時の行動は理解できない。
女なんて面倒なだけなのに、好きでもない女にキスをするなんて……俺らしくない。
しかも、神崎の反応が可愛くて…あれから何度も俺からキスをしている。
ーーで結果、今に至るわけか。
「はぁ….、何…考えてんだ?俺。」
「本当に何考えてんの?」
突然、誰かに話しかけられて、手元の本から声がした方に視線を移す。
そこには、胸の前で腕を組んで眉間に皺を寄せた女の姿があった。
「…佐久川さん?」
いつも神崎と一緒にいる女だよな?
なんでこんな朝早くから、ここに居るんだ?
「ちょっと、桐生に言っておきたい事があってさ。」
「何?」
「単刀直入に言うわ。本気じゃないなら萌香に近づかないで。
あの子、見た目は派手だけど中身は超純真なんだよね。
なんで桐生がイケメン隠してるのかは知らないけど、あの子を巻き込まないで。」
「神崎さん、君にバラしたんだ。」
「勘違いしないで。萌香はそんなことしない。
桐生がイケメンだってことは、ずっと前から気付いてた。
周りの子達は全く気付いてないみたいだけどね。」
さすが佐久川。
他の人とはなんか違うとは思ってたけど、思ってたより勘が鋭いんだな。
「それだけ、じゃあね」と言って立ち去ろうとした佐久川は、2、3歩行ったところで振り返った。
「本当は、桐生なんて今すぐ殴ってやりたいくらいムカついてるんだけど、一応、教えといてあげる。
萌香、清宮先輩にバンド演奏見に来てって誘われたんだって。
たぶん、告白されるね、アレは。
今、萌香、弱ってるから清宮先輩に落ちちゃうかもね。」
そう言って、佐久川は颯爽と去って行った。
なんで、そんなこと俺に教えんの?
近づくなって言ったり、煽るようなことを言ったり…俺にどうしろってゆーんだよ。