メガネの王子様
ビックリしちゃったんです
今日は何事もなく穏やかに時間が過ぎていった。
午後の当番の人と交代をして、私と陽葵、今日は健ちゃんも一緒にお昼ご飯の買い出しに行く。
「今日は何を食べようかなぁ?萌香は何が食べたい?」
陽葵は校庭に出ている屋台をキョロキョロと見ながら歩く。
「うーん…何かなぁ?」
今日も昨日と一緒で、食欲があまり無いんだよね…。
失恋で食欲が無くなるなんて…自分はそんなヤワじゃないって思ってたんだけどな。
「…あのさ…、俺、パン買ってきてるんだわ。」
少し言いにくそうにツンツン頭をポリポリと掻きながら話した健ちゃん。
「そ、じゃぁ、健ちゃんはどこか空いてるベンチ探してて。私と萌香は何か買って来るよ。」
そう言って、陽葵が私の手を取って歩き出そうとしたら
「待てって。」
と、私のもう片方の手を健ちゃんが掴んだ。
「だから、そうじゃなくてっ。クリームパン買ってきたから///」
私の方を見たかと思うと、すぐに目を逸らして健ちゃんが言った。
「クリームパン?」
健ちゃんは甘いパンは食べないはずだよね?
陽葵はパンにクリームなんて邪道だっていつも言ってるし…
唯一、クリームパンが好きなのってーーー
「神崎、クリームパン好きだろ///?」
「うん?好きだよ?」
「じゃぁ、はい」と言って、健ちゃんはパンが入った紙袋を私に渡した。
「え?」
「え?じゃなくて。神崎のために買ってきたんだよ///」
「え、え?どうして?」
「どうしてって…神崎が昨日から…元気ないからだよ///」
え?
健ちゃんにバレてたの?
嘘…それで私のためにパンを買ってきてくれたの?
私の好きなこのクリームパンって駅前しか売ってないよ?
健ちゃんは自転車通学だから駅前って通らないよね?
「へぇ…、わざわざ駅前まで行って萌香のためだけにクリームパンを買いに行ってきたんだぁ。
萌香だけかぁー。へぇー。」
陽葵がニタニタしながら、健ちゃんの周りをクルクルと歩いている。
「うるせーな/// 陽葵の分もあるよっ。」
そう言って、少し乱暴に紙袋を陽葵に渡した健ちゃん。
「わーい、やったね。メロンパンだぁ。健ちゃん、大好き♡」
「はい、はい。じゃ、どっか座って食おーぜ。腹減った。」
健ちゃんが空いてるベンチの方へ一歩踏み出したとき、私は健ちゃんの腕を両手で掴んで引き止めた。
「か、神崎///?」
「健ちゃん、ありがとう。」
健ちゃんの優しさが嬉しくて、心がポカポカと暖かくなり自然と笑顔でお礼が言えた。
「っ//////⁉︎」
「健ちゃん?」
健ちゃんが固まったまま何も言ってくれないから、私がキョトンと健ちゃんを見上げたままでいると
「お前、他でそんな顔すんなよ///」
と言って私の髪をクシャクシャとしてから、早足でベンチに向かって歩いて行ってしまった。
そんな顔ってどんな顔?
ひょっとしてキモイ顔してた?私…。
「萌香、行こう。」
笑顔で陽葵が私の手を取り、健ちゃんが座っているベンチに向かって歩き出す。
「うんっ。」
陽葵と健ちゃんが側にいてくれて、私は本当に幸せ者だな。