メガネの王子様
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翌朝、教室に入るなり私はまた囲み取材を受けていた。

「萌香ちゃんっ、昨日、桐生くんと抱き合ってたって本当っ⁉︎」

「イケメン彼氏とは別れちゃったのっ⁇」

私は皆んなの勢いに圧倒されて何も言えないでいた。

昨日のアレ、誰かに見られてたんだっ。

何て説明したらいいんだろうっ⁇

頭の中で昨日の出来事がグルグルと回るだけで、全然まとまらないでいると、皆んなの体の隙間から手がニョキッと出てきて私の腕を掴み、輪の中から引っ張り出した。

「走るぞっ!」

そう言って、その人は私の腕を掴んだまま教室から飛び出した。

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裏庭まで来て、その人はやっと私の手を離してくれた。

「はぁ、はぁ、はぁ……。」

「大丈夫か?神崎。」

私は全力疾走でメチャ息切れしているのに、全くと言っていいほど彼は息切れしていない。

さすが…バスケ部のエース。

「はぁ、はぁ…、う、ん。ありがとう、健ちゃん。」

私を囲み取材から救ってくれたのは、健ちゃんだった。

私はフゥと深呼吸をして息を整える。

「また、助けてもらっちゃったね。」

「お前、最近、囲まれすぎっ。」

「あははっ、本当だね。」

「凝りないな」と言いながら健ちゃんがベンチに座ったので、私もその隣に座った。

「ーーで、今度は何があったんだ?」

「うーん…、昨日さぁ、実は桐生と一緒に帰ったんだよね。
た、たまたまだよっ///陽葵にドタキャンされちゃったからっ///」

「へぇ…桐生と一緒にね…。
ーーで?一緒に帰ったくらいじゃ、あんな大騒ぎになってないだろ?」

ゔ…今日の健ちゃん、なんだかいつもより突っ込みが厳しい…。

「……で、ですね、、少しの間だけ私ひとりになった時があって、ナンパ?されちゃいまして…。
声掛けてきた人が、なんとあのチャラパーマだったんだよね。」

「えっ⁉︎あの文化祭の時のムカつく野郎かよっ?」

「そうなんだ。それで私が車に引きずり込まれそうになってた時に、桐生が帰って来て助けてくれたの。

………凄く怖かった。

そんな私の気持ちに気付いた桐生が、抱き締めて慰めてくれたんだ///

たぶん、その場面だけを誰かに見られてたんだね。」

「そっか…。とりあえず、不本意だけど桐生に感謝だな。」

ん?なぜ不本意?

「俺が側にいられたら、良かったのに…。」

健ちゃんが前髪をクシャッとしながら、何かボソッと小さな声で言った。

「え?何、健ちゃん、よく聞こえなかった。」

「なんでもないよ」と笑顔で答えてから、

「…………なぁ、神崎。」

健ちゃんが真剣な眼差しで私の事を見てきたので、一瞬ドキッとする。

「な、なに?」

「…あ、のさ、神崎の好きな奴ってーーー
もしかして………桐生?」

「えっ///⁉︎」

突然の質問に、素直に反応してしまう私の顔色。

「真っ赤だな、神崎って分かりやすすぎ。
……そっか、文化祭の時の彼氏って…やっぱり桐生か。
アイツ、超イケメンだったのな。」

フッと苦笑いしながら健ちゃんが言った。

「健ちゃんっ、お願いっ。この事は他の人には言わないでっ。」

私は健ちゃんの腕をガシッと掴み懇願する。

「大丈夫、安心しろ。誰にも言わないよ。」

そう言って、健ちゃんは私の頭を優しく撫でてくれた。

「ありがとう…健ちゃん。」

ホッとして笑顔で私が言うと、健ちゃんも笑顔で返してくれる。

健ちゃんのこの笑顔にはいつも安心させられる。

しばらくの間、健ちゃんと2人でベンチに座って話したあと、私は「そろそろ戻ろっか?」と言ってベンチを立とうとした。

「待ってくれ。」

そっと健ちゃんが私の手首を掴み、切なそうな表情で私を見上げる。

「神崎は…さ、桐生と付き合って…側にいて幸せ?」

「えっ///⁉︎ なに、どうしたの?健ちゃん///」

「いいから、答えて。」

「……実は、桐生とは付き合ってないんだ。ちょっと色々あって、桐生が彼氏役をしてくれてるだけ。

私が勝手に桐生のこと好きなだけで、あっちは私のこと恋愛対象として見てないんだ。

でも、私は桐生の側にいれるだけで幸せ…って思ってる。

まぁ……私のこと好きになってくれたらいいなとも思ってるけど…///」

「…そっか、、、分かった。俺は神崎のこと応援するよ。」

健ちゃんは私の手首を離し、ベンチから立ち上がって笑顔で言った。

「じゃ、戻るか。」と教室へ向かって歩き出した健ちゃんのあとを、私は少し照れながらついて行った。


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