メガネの王子様



◇◇◇◇◇



俺は柄にもなく集団行動をしている。

クラスメイト6人でファミレスなんて人生初の経験だ。

最近の俺がなぜこんな慣れないことをしているのかと言うと、全ては神崎をこっちに振り向かせる為。

ただ、それだけだ。



「ふふ…、健ちゃん口にご飯粒ついてるよ。」

「えっ⁉︎マジっ///」

町田が口の周りを指で払うけど、なかなか上手くいかないようだ。

今どき、男子高校生が口に米粒を付けるなんてことがあるのか?

町田は思ったより子供っぽいヤツなんだな。

なんて思いながら眺めていたら、

「違うよ、ここ。」と言って、神崎が町田の口に付いている米粒を取った。

俺は目を見開き、グッと拳に力を入れる。

何やってんだよっ‼︎

そんな簡単に他の男に触れてんじゃねぇよっ。

「…萌香ちゃんと町田くんって、すごくお似合いのカップルですね///」

何言い出すんだ?この女?

そんな事になられたら困るんだよっ。

神崎は付き合っていないと否定をしていたが、町田が熱い視線でアイツを見つめて

「………俺と…本当に付き合ってみる///?」なんて言いやがった。

神崎は冗談に捉えたみたいだけど、町田は完全に本気だ。

もし、神崎の好きなヤツが町田だとしたら…

ーーー俺の出る幕がないじゃねぇか。

内心焦っていると神崎が席を立ってどこかへ行った。

恐らくトイレにでも行ったのだろう。

俺も少し時間が経ってから席を立ち神崎が行った方へ向かう。

フロアからは死角になっている「化粧室」と書かれた所から、丁度、神崎が扉を開けて出てきた。

「あれ?桐生、どうしたの?」

俺が立ち止まったまま動かないのを不思議に思った神崎が少しずつ近づいてきた。

手の届く距離まで来たとき、神崎の腕を強引に引き寄せ、壁と自分の腕の中に捕らえる。

何が起こっているか分からないと言うような顔で俺を見上げる神崎。

「なんで簡単に男に触れんの?」

「え?」

「町田の事が好きなのかよ?」

ダメだ。

嫉妬で自分の気持ちが抑えきれない。

「き、桐生?」

「他の男の事なんて見んなよ。」

小さな彼女の身体をぎゅっと抱きしめドキッとする。

思ったより細くて…柔らかくて…

甘い良い香りがした。

このまま、強引に唇を奪いたいっ!

そんな衝動が起き顔を近づけようとしたが

ーーーいや、冷静になれ。

この前のように拒否されては立ち直れない。

まだだ…まだ早い。

俺の事をもっと意識させないと失敗する。

神崎を抱きしめている腕を解き、耳元に唇を寄せる。



「あんまり妬かせるな…。」



そう一言だけ言って、可愛い耳朶を甘噛みしてやった。

もっと俺を意識しろよ?


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