メガネの王子様
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1日目は大通公園にテレビ塔、大倉山ジャンプ競技場に行ってから市内のホテルに入った。

ホテルの部屋は班別に分かれているので、私は陽葵と優花ちゃんと3人で同じ部屋なんだ。

「超テンション上がるねー。」

陽葵がバッグから私服を出し、着替えながら言う。

観光は制服じゃないといけないけど、宿泊先では私服が認められているんだ。

「うん、楽しいね」と私と優花ちゃんも着替えながら返事をした。

「優花ちゃん♡」

着替え終わった陽葵が、ベッドに座って優花ちゃんを手招きしている。

「なんですか?」

素直な優花ちゃんは言われるがまま、陽葵の隣に座った。

座ると同時に、陽葵は優花ちゃんをぎゅっと捕まえ尋問を始める。

「今夜は斎藤くんと会う約束してるの?答えないと離してあげないぞぉ。」

「え⁉︎えっと…、………や…約束してます///」

真っ赤な頬を両手で押さえながら答える優花ちゃん。

か、可愛い///

「そっかぁ。ゆっくりラブラブしてきなよぉ♡と、こ、ろ、で、どっちから告白したの?」

質問に答えたのに優花ちゃんを離さず、更に踏み込んで質問する陽葵。

優花ちゃんは、予想外の質問に更に赤くなり焦りまくってる。

可哀想に……でもっ、

「私もメチャ聞きたいっ。」

私は優花ちゃんを陽葵との間に挟むようにして座った。

「…ゎかりました///」

観念した優花ちゃんは、ポツリポツリと恥ずかしそうに話してくれる。

「…告白、は、私からしました///」

「「えーーっ⁉︎」」

私と陽葵は驚きのあまり叫んでしまった。

だって、ビックリするよねっ。

大人しく控え目な優花ちゃんが、斎藤くんに告白したんだよ?

普通は、斎藤くんからしたと思うよね?

私達が「もっと詳しく」とお願いすると、優花ちゃんは小さな声でまたポツリポツリと話し始めてくれた。

「バスケしてる斎藤くんは、とてもカッコ良くて…

私の周りにも斎藤くんが気になるって子が何人かいたんです。

私なんて…斎藤くんが相手してくれるはず無いって思ってたんですけど…

斎藤くんの隣に他の女の子が居ると思うと、もう、それだけで苦しくって耐えられなくて…

私が斎藤くんの隣に居たい。

斎藤くんの特別になりたいって思ったんです。

このまま、遠くから見ているだけだと、きっと後悔する。

気持ちだけでも伝えようって…

覚悟を決めて斎藤くんに告白したんです。

そしたら、斎藤くんも私のこと好きだったって言ってくれて…///」

優花ちゃんは、言い終わって終始真っ赤になっていた顔を両手で覆い隠した。

優花ちゃんって本当に可愛いいな。

でも、可愛いだけの女の子じゃなかったんだね。

……好きな人に気持ちを伝えるのって、すごく勇気がいることだよね。

だって、両想いになれるとは限らないんだもん。

頑張って斎藤くんに告白した優花ちゃん。

私も優花ちゃんみたいに勇気を出して、桐生に気持ちを伝えたい。

「…私も告白しようかな?」

「え⁉︎萌香、本気?」

「…う、ん///」

「えっ、萌花ちゃん、他校に彼がいましたよね⁇」

優花ちゃんが大きな目をより大きくして言った。

そうだった、イケメンバージョンの桐生と付き合ってる事になってたんだ。

「えっと…あれは、、、。好きな人っ、他に好きな人が出来て彼とは別れたの。」

咄嗟に出た嘘…

優花ちゃんみたいな良い子に嘘なんてつきたくないけど、桐生との約束だから仕方ないよね?

ゴメンね…優花ちゃん。

「ーーで?萌香、桐生にいつ告白するの?」

「えっ、えっ⁉︎萌香ちゃんの好きな人って、桐生くん///⁇」

サラッとバラしちゃったのね、陽葵さん…。

「そうなんだ。私、桐生の事が好きなんだ///
告白は……こ、今夜っ、頑張ってみるっ///」

こんなのは勢いが大切だよね?

明日になったら、怖いからやっぱり無理ってなっちゃいそうだもん…。

「そっか…分かった。頑張れ、萌香。」

陽葵がベッドから立ち上がり、笑顔で私の頭をポンポンとしてくれる。

「…あのっ、それじゃあ、町田く…モゴモゴ。」

優花ちゃんが何か言いかけたのを、陽葵が素早く私の頭から優花ちゃんの口へと移動させて遮った。

そして優花ちゃんの耳元で何か言っている。



「健ちゃんは萌香の事を応援するって覚悟を決めてるから心配しないで。」




そんな事を言っていたなんて私は全く知らなかったんだ。

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