メガネの王子様
◇◇◇◇◇
俺は「皆んなを探す」と言って神崎の側を離れた。
もちろん、探すなんてことはしない。
とりあえず、あの場には居られないと思ったんだ…。
俺は神崎がいる所からは見えない少し離れた場所にあるベンチに座る。
「ありがとう」と言った神崎の笑顔が可愛いすぎて、思わず抱きしめてしまった。
身体の奥から何か熱いものが込み上げてきて抑えがきかなかったんだ。
「俺、神崎のこと………」
好きだーーー
危うく告白してしまうところだった。
いや、告白はするつもりではいるんだ。
でも、あの場ではさすがに……ね?
俺だって、もう少し場所にはこだわりたい。
「はぁぁ…。」
ひとりベンチに座り大きなため息を吐く。
それにしても………
マジであいつ、可愛すぎんだよっ///
しかも最近、益々、可愛くなってんじゃねーの?
「A組の神崎さんって超可愛いよなー。」
俺の心が読まれたのかと思って、勢いよく声がした方を見ると、他のクラスの男が3人、俺が座っているベンチの逆サイドに座り神崎の話をしていた。
俺はそっと耳を傾け話の続きを聴く。
「オレ、マジあの子好き。この旅行で告白してみよっかな?」
「ばーか、お前じゃ絶対ムリだよっ。神崎さんって、あの清宮先輩を振ったんだぜ?そんじょそこらのイケメンじゃムリなんだよ。」
「そうそう、神崎さんってイケメンとしか付き合わないらしーぜ?クラスの女子が言ってた。」
「だよな、だって文化祭の時の彼氏も超イケメンだったじゃん。」
「そーいや、そうだな。よく考えたら、あの子の周りイケメンばっかだよな。清宮先輩だってそうだし、健人だってイケメンじゃん。」
「なんかさ、中学の時の彼氏も超イケメンだったらしいぜ。」
「マジで?オレ、ムリじゃん。」
「だから、初めっからそう言ってんだろ?」
「諦めな、アハハ…」と笑いながらベンチを離れて行った。
イケメンとしか付き合わないって?
神崎が?
………ただの噂だろ?
あいつがそんな事で人を判断するわけない。
実際に神崎の口から聞いたわけじゃないから信憑性は薄いよな?
おっと、そろそろ戻らないとな。
いつまでも神崎を1人にするわけにはいかない。
「あいつ、すぐナンパされるからな…。」
俺はベンチを立ち、神崎がいる所へと戻って行った。