メガネの王子様
*****




「萌香っ、大丈夫⁉︎」




肩をユサユサと揺らされ私はハッと我に返った。

「…陽葵?」

「陽葵?じゃないよっ、探したんだよ。電話かけても全然でないし、心配したんだからねっ!」

ベンチに座ったまま見上げると、陽葵や健ちゃん、優花ちゃんに斎藤くんまで心配そうな顔で私を見ていた。

「ごめん、大丈夫だよ。」

私は無理矢理に笑顔を作って、明るく返事をする。

そんな私の不自然な笑顔は、当然、陽葵にはバレてしまうもので…

「ごめん、ちょっと萌香の体調が悪そうだから休憩してくる。

健ちゃん達は引き続き楽しんできて。」

そう言って陽葵は私に寄り添い、人目のないところまで連れて来てくれた。

「ここに座って…。」

陽葵が優しくベンチに座らせてくれる。

「それで…桐生と何かあったの?」

そっと隣に座った陽葵は、私の背中に手を当て言った。

陽葵の落ち着いた優しい声に、張り詰めていた糸が切れてしまい、ポロポロと涙が零れてスカートに染みをつくっていく。

「わ…た、し…、桐生に、うっ… 、嫌…われちゃっ…た。

に、二度と…関わるなっ…て、言われ…て。」

どうしようっ!

桐生が口をきいてくれなかったらっ。

どうしようっ!

桐生がもう目を合わせてくれなかったらっ。

そんなの…苦しすぎて耐えられないよ。

「…そっか、それは辛いね。

ねぇ…萌香。ゆっくりでいいから話してくれる?

桐生との間に何があったのか。」

陽葵は私の肩をそっと抱き寄せ、ハンカチを渡してくれる。

「……う、ん。」

私は力無く返事をし受け取ったハンカチで涙を拭いながら、さっきの出来事を陽葵に話した。



その日、桐生は皆んなと距離をとり、誰とも会話をする事は無かった。


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