メガネの王子様
最終章
彼女なんです
「おっす。」
私の家の前で、自転車にまたがったまま片手を小さく挙げて挨拶をする健ちゃん。
今日から健ちゃんが、毎朝、自転車で迎えに来てくれる事になった。
「大変だからいいよ」って断ったんだけど、「俺のトレーニングに協力して」って言われて半ば強引に迎えに来る事が決まったんだ。
ーーそう、私達は保健室で告白されたあの日から付き合っている。
陽葵に健ちゃんとの事を報告したら「おめでとう」と笑顔で祝福してくれた。
「おはよ。」
私がニッコリと笑って挨拶をしてから、自転車の荷台に座わろうとしたら
「ちょっと待って。」
と言って健ちゃんが私を引き止める。
どうしたんだろう?と思っていたら、健ちゃんが自分のしている手袋を外して私にはめてくれた。
「あ、温めておいたから///」
「えっ、いいよ。健ちゃんが冷たいじゃん。」
私が慌てて手袋を外そうとしたら、上からぎゅっと手を握られて動きを封じ込められる。
「いいの。俺がしておいて欲しいんだよ///」
頬を赤く染めながら言った健ちゃん。
そんな健ちゃんを見て私は可愛いと思った。
「ふふ…、ありがとう。健ちゃん。」
「は、早く乗って///遅刻するぞ。」
恥ずかしいのか健ちゃんはハンドルを握って前を向いてしまう。
「はーい」と言って後ろに乗り、私は落ちないように荷台を掴んだ。
「………………。」
「健ちゃん?出発しないの?」
自転車にまたがったままペダルを漕ぐ気配のない健ちゃんを不思議に思い声をかける。
「手はここだからっ///」
そう言って荷台を掴んでいる私の手を解き、自分のお腹に回した。
「じゃ、出発するぞ///」と言ってペダルを漕ぎ出した健ちゃん。
お腹に回した手から健ちゃんの体温が伝わってくる。
私、きっと、この人の事を好きになれるーーー。