メガネの王子様
*****
学校に着いて自転車を置いてから、健ちゃんと一緒に教室へ向かう。
付き合って何日か経ってるから周りもそんなに騒がなくなったんだけど、初日はけっこう大変だった。
いつものように囲み取材のような状態になって、陽葵があの怖い笑顔で騒ぎを収めるというパターン。
「おはよ。萌香、健ちゃん。」
教室に入ると陽葵がいつも通り笑顔で挨拶をしてくれる。
「おっす。」
「おはよ、陽葵。」
私達は陽葵に挨拶をしてから、それぞれの自席につく。
健ちゃんは席に座って斎藤くんと何か楽しそうに話している。
私は鞄を開け中身を机の中に移しながら、対角線上にある桐生の席をチラッと見た。
まだ、来てない。
毎日、無意識に近い状態で桐生の姿を探してしまう。
この変な癖も早くなおさないとな…。
健ちゃんが知ったらいい気しないもんね?
「今朝も健ちゃんと一緒に来たの?」
陽葵が私のところへ来て、空いている前の席に座った。
「うん。大変だから迎えに来なくていいよって言ったんだけどね。」
「健ちゃんも頑張るねぇ。まぁ、萌香は自分のだってアピールだと思うけどね。」
ニシシ…と意地悪な顔で健ちゃんがいる方を見て笑う陽葵。
その視線に気が付いたのか健ちゃんがこっちにやって来た。
「何、気持ち悪い笑い方してんだよ、陽葵。」
「別にぃ。健ちゃんは萌香ラブだなぁと思ってぇ。」
「はぁぁぁっ///⁉︎何言ってんだ?この馬鹿///」
健ちゃんは真っ赤な顔をして陽葵の頬を「変な事を言うのはこの口かっ」と言いながら引っ張っている。
アハハと私達が楽しそうに笑っていると、ガラッと扉が開いた音がして、私はまた対角線上にある席を見た。
…桐生だ。
桐生は鞄を机の横に掛けてから椅子を引く。
ーーーえ?
私の心臓はドクンッと跳ね上がった。
今、目が合った?
いや、モサモサの前髪と眼鏡に隠れて目がよく見えないから気のせいかも知れない。
でも、一瞬、こっちを向いていたよね?
桐生は既に座って本を読み始めている。
「やっぱり私の気のせいかな?」なんて思っていたら、突然、視界が真っ暗になった。
「えっ⁉︎なにっ⁇」
陽葵と戯れていたはずの健ちゃんが、いつの間にか後ろに来ていて、自分の胸に私を引き寄せ、片手で私の視界を遮る。
「け、健ちゃん?」
「……見んなよ。」
「え?」
「あ…悪い…、なんでもない。」
慌てて私の目元から手を離した健ちゃん。
彼の悲しそうな声に私は胸が痛くなり、今は肩にある大きな手をぎゅっと握った。
「大丈夫だよ、健ちゃん。」
そう言って、自分自身にも言い聞かせる。
私は健ちゃんの彼女になったんだ。
桐生のことなんて見ても考えてもダメ。
早く忘れて健ちゃんの事だけを考えていくんだっ。
学校に着いて自転車を置いてから、健ちゃんと一緒に教室へ向かう。
付き合って何日か経ってるから周りもそんなに騒がなくなったんだけど、初日はけっこう大変だった。
いつものように囲み取材のような状態になって、陽葵があの怖い笑顔で騒ぎを収めるというパターン。
「おはよ。萌香、健ちゃん。」
教室に入ると陽葵がいつも通り笑顔で挨拶をしてくれる。
「おっす。」
「おはよ、陽葵。」
私達は陽葵に挨拶をしてから、それぞれの自席につく。
健ちゃんは席に座って斎藤くんと何か楽しそうに話している。
私は鞄を開け中身を机の中に移しながら、対角線上にある桐生の席をチラッと見た。
まだ、来てない。
毎日、無意識に近い状態で桐生の姿を探してしまう。
この変な癖も早くなおさないとな…。
健ちゃんが知ったらいい気しないもんね?
「今朝も健ちゃんと一緒に来たの?」
陽葵が私のところへ来て、空いている前の席に座った。
「うん。大変だから迎えに来なくていいよって言ったんだけどね。」
「健ちゃんも頑張るねぇ。まぁ、萌香は自分のだってアピールだと思うけどね。」
ニシシ…と意地悪な顔で健ちゃんがいる方を見て笑う陽葵。
その視線に気が付いたのか健ちゃんがこっちにやって来た。
「何、気持ち悪い笑い方してんだよ、陽葵。」
「別にぃ。健ちゃんは萌香ラブだなぁと思ってぇ。」
「はぁぁぁっ///⁉︎何言ってんだ?この馬鹿///」
健ちゃんは真っ赤な顔をして陽葵の頬を「変な事を言うのはこの口かっ」と言いながら引っ張っている。
アハハと私達が楽しそうに笑っていると、ガラッと扉が開いた音がして、私はまた対角線上にある席を見た。
…桐生だ。
桐生は鞄を机の横に掛けてから椅子を引く。
ーーーえ?
私の心臓はドクンッと跳ね上がった。
今、目が合った?
いや、モサモサの前髪と眼鏡に隠れて目がよく見えないから気のせいかも知れない。
でも、一瞬、こっちを向いていたよね?
桐生は既に座って本を読み始めている。
「やっぱり私の気のせいかな?」なんて思っていたら、突然、視界が真っ暗になった。
「えっ⁉︎なにっ⁇」
陽葵と戯れていたはずの健ちゃんが、いつの間にか後ろに来ていて、自分の胸に私を引き寄せ、片手で私の視界を遮る。
「け、健ちゃん?」
「……見んなよ。」
「え?」
「あ…悪い…、なんでもない。」
慌てて私の目元から手を離した健ちゃん。
彼の悲しそうな声に私は胸が痛くなり、今は肩にある大きな手をぎゅっと握った。
「大丈夫だよ、健ちゃん。」
そう言って、自分自身にも言い聞かせる。
私は健ちゃんの彼女になったんだ。
桐生のことなんて見ても考えてもダメ。
早く忘れて健ちゃんの事だけを考えていくんだっ。