メガネの王子様
◇◇◇◇◇
佐久川に屋上へ呼び出されてから、毎日、後悔の念に駆られる俺。
教室にいるとどうしても神崎の姿が目に入ってしまって、遣る瀬無い気持ちになるので休み時間のたび教室を抜け出し、別校舎の陽当たりのいい場所を見つけ、そこで本を読んでいた。
ポケットからスマホを取り出し時間を確認する。
「そろそろ教室に戻るか。」
俺は立ち上がりケツの埃をポンポンと叩いてから、本校舎と別校舎をつなぐ渡り廊下へと向かう。
今日は雪でも降るんじゃないかと思うくらいに寒い。
俺が肩を窄めポケットに両手を突っ込み小走りで渡り廊下を渡っていたら、フラフラと壁を伝いながら歩いている女が見えた。
「なに、あいつ?ヤバくね?」なんて思いながら進んでいくと、女の顔がハッキリと見えてくる。
ーーー神崎⁉︎
フラフラと前を歩いている女が神崎だと気付いた瞬間、あいつは冷たい地面に座り込み、そこからすぐに横たわってしまった。
俺は急いで神崎の側まで駆け寄る。
青い顔をして倒れている神崎を抱きかかえ、あまりの軽さに驚いた。
なに?こいつ、軽すぎるんじゃないか?
こんな青い顔して…ちゃんと飯食ってんのかよ?
俺は急いで保健室へ連れていく。
両手が塞がっていて、扉を開けることが出来なかった俺は思いっきり扉を蹴り叩いた。
すぐに扉が開き養護教諭の先生が出てきた。
「先生っ、こいつ診てっ。」
俺は先生の誘導で神崎をベッドまで連れて行きそっと寝かせる。
熱を計るからと言われ俺はカーテンの外で待っていた。
「寝不足からによる貧血ね。このまま寝かせておいたら大丈夫よ。あら、体温も少し低いわね。食事もきちんとしてないのかしら?」
先生はカーテンを開け、体温計をなおしてから俺に視線を向けた。
「彼氏?しばらくの間、彼女の側にいる?」
「……はい。」
何か先生は勘違いしてたけど、そんなことより神崎の事が心配で返事だけして、ベッドの隣に置いてある椅子に座る。
神崎から規則正しい呼吸が聞こえてきて少し安心した。
久しぶりに正面から見る神崎の顔。
顔色が悪いし少し痩せた気がする。
ーーーそっと前髪に触れる。
サラサラとこぼれ落ちる前髪の下から見えた長い睫毛。
少し丸い小さな鼻。
形のいい柔らかそうな唇………。
この唇に何度もキスしたんだよな?
前はあんな簡単にキス出来たのに…今は触れる事さえ出来ない。
もう一度、触れたい。
そんな想いが溢れてきて、俺は柔らかそうな唇を親指でそっとなぞる。
「………ん、。」
起こしてしまったのかと思い慌てて手を退けた。
神崎からまだ一定のリズムの呼吸音が聞こえてきて、俺はホッと胸を撫で下ろす。
何やってるだろ…俺。
突き放したのは自分なのに……。
神崎をこんな状態に追い込んだのも、たぶん自分なのに…。
「……信じてあげれなくて、ゴメンな。」
俺は眠っている神崎に謝罪する。
そして
「好きだ」と心の中で囁きながら、神崎のおでこにそっとキスをした。
目を覚ました時に俺がいたら迷惑だよな?
そう思った俺は、カーテンを開け先生に挨拶をしてから保健室を出て行った。
授業が始まっていて誰も居ない静かな廊下を歩いていると、ものすごい勢いで走ってくる町田とすれ違う。
振り返ると保健室へ入っていく町田の姿が見えた。
佐久川に屋上へ呼び出されてから、毎日、後悔の念に駆られる俺。
教室にいるとどうしても神崎の姿が目に入ってしまって、遣る瀬無い気持ちになるので休み時間のたび教室を抜け出し、別校舎の陽当たりのいい場所を見つけ、そこで本を読んでいた。
ポケットからスマホを取り出し時間を確認する。
「そろそろ教室に戻るか。」
俺は立ち上がりケツの埃をポンポンと叩いてから、本校舎と別校舎をつなぐ渡り廊下へと向かう。
今日は雪でも降るんじゃないかと思うくらいに寒い。
俺が肩を窄めポケットに両手を突っ込み小走りで渡り廊下を渡っていたら、フラフラと壁を伝いながら歩いている女が見えた。
「なに、あいつ?ヤバくね?」なんて思いながら進んでいくと、女の顔がハッキリと見えてくる。
ーーー神崎⁉︎
フラフラと前を歩いている女が神崎だと気付いた瞬間、あいつは冷たい地面に座り込み、そこからすぐに横たわってしまった。
俺は急いで神崎の側まで駆け寄る。
青い顔をして倒れている神崎を抱きかかえ、あまりの軽さに驚いた。
なに?こいつ、軽すぎるんじゃないか?
こんな青い顔して…ちゃんと飯食ってんのかよ?
俺は急いで保健室へ連れていく。
両手が塞がっていて、扉を開けることが出来なかった俺は思いっきり扉を蹴り叩いた。
すぐに扉が開き養護教諭の先生が出てきた。
「先生っ、こいつ診てっ。」
俺は先生の誘導で神崎をベッドまで連れて行きそっと寝かせる。
熱を計るからと言われ俺はカーテンの外で待っていた。
「寝不足からによる貧血ね。このまま寝かせておいたら大丈夫よ。あら、体温も少し低いわね。食事もきちんとしてないのかしら?」
先生はカーテンを開け、体温計をなおしてから俺に視線を向けた。
「彼氏?しばらくの間、彼女の側にいる?」
「……はい。」
何か先生は勘違いしてたけど、そんなことより神崎の事が心配で返事だけして、ベッドの隣に置いてある椅子に座る。
神崎から規則正しい呼吸が聞こえてきて少し安心した。
久しぶりに正面から見る神崎の顔。
顔色が悪いし少し痩せた気がする。
ーーーそっと前髪に触れる。
サラサラとこぼれ落ちる前髪の下から見えた長い睫毛。
少し丸い小さな鼻。
形のいい柔らかそうな唇………。
この唇に何度もキスしたんだよな?
前はあんな簡単にキス出来たのに…今は触れる事さえ出来ない。
もう一度、触れたい。
そんな想いが溢れてきて、俺は柔らかそうな唇を親指でそっとなぞる。
「………ん、。」
起こしてしまったのかと思い慌てて手を退けた。
神崎からまだ一定のリズムの呼吸音が聞こえてきて、俺はホッと胸を撫で下ろす。
何やってるだろ…俺。
突き放したのは自分なのに……。
神崎をこんな状態に追い込んだのも、たぶん自分なのに…。
「……信じてあげれなくて、ゴメンな。」
俺は眠っている神崎に謝罪する。
そして
「好きだ」と心の中で囁きながら、神崎のおでこにそっとキスをした。
目を覚ました時に俺がいたら迷惑だよな?
そう思った俺は、カーテンを開け先生に挨拶をしてから保健室を出て行った。
授業が始まっていて誰も居ない静かな廊下を歩いていると、ものすごい勢いで走ってくる町田とすれ違う。
振り返ると保健室へ入っていく町田の姿が見えた。