メガネの王子様
◇◇◇◇◇
「離してっ!」
そう叫び逃げるように去って行った神崎。
「はぁぁぁ……………。」
俺はデカイ溜息をつきながらその場にしゃがみ込む。
やっぱ、許してもらえないか………。
そりゃ、そうだよな。
俺は神崎のことを信じられなくて無視したり、傷つける言葉を言ったりしたんだから…。
「彼女にちょっかい出すなって言ったよな?」
頭上から聞き覚えのある声がして、俺はサッと立ち上がり、すぐにいつもの無表情を作る。
「覗きだなんて悪趣味ですね、町田くん。」
俺が振り返ると、そこには不機嫌そうな町田が立っていた。
「別に覗いてたわけじゃねーよ。それに悪趣味なのはお前の方だろ?」
「ハハ…それって、どういう意味ですか?」
「その顔が嘘くさいんだよ。どういう意図があってそうやって顔を隠してるのか知らないけど、お前みたいに自分を偽ってる奴に俺は負ける気がしない。」
町田が敵対心剥き出しの目で言った。
確かに俺は本当の自分を隠している。
でも、それは自分自身を守るための手段だ。
それの何が悪い?この姿じゃないと毎日がゾッとする生活になるんだぞ?
「町田くんには分からないですよ。」
「……。まぁ、俺には関係ないけど。とにかく、神崎には今後ちょっかい出すな。いいなっ。」
と言って俺を睨んでビシッと指差し牽制をしてから、町田は神崎の事を追いかけるように走って行った。
「誰がお前の言うことなんか聞くかっ。俺はお前から絶対に神崎を奪ってやるからなっ。」
俺は町田の後ろ姿に向かって思いっきり叫ぶ。
わかったよ。
お望み通り全てをさらけ出して、全力で勝負に挑んでやるよ。
このとき俺は神崎を手に入れるため、今までの平穏な生活を失う覚悟をした。