メガネの王子様

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月曜日の朝。

私は重い足取りで学校へ向かう。

今朝から「おっす」と照れながら自転車にまたがって挨拶をしてくれる健ちゃんの姿はない。

私たちは別れたのだから当然だ。

土曜日の夜、公園で別れてから健ちゃんとは連絡をとっていない。

今日はどんな顔をして会えばいいんだろう？

もう、友達にも戻れないのかな？

陽葵と健ちゃんと3人で笑いあえる日はないのかな？

そう思うと涙が零れそうになる。

ガラ…と力なく教室の扉を開けると「おはよ」といつも通りの笑顔で挨拶をしてくれる陽葵。

陽葵には土曜日の夜、家に帰ってからすぐに電話をした。

ちょうど彼氏と一緒にいた陽葵だけど、私の話を優先してくれて「大丈夫」「萌香は悪くないよ」とずっと励ましてくれた。

「おはよ…、陽葵。」

「こらっ、元気がないぞっ、心配ないって。私がいるじゃん。」

こんなことになって、陽葵も健ちゃんと気まづいはずなのに当然だというくらいに私の味方になってくれる。

「うん、ありがとう。」

頑張って笑顔で返事をすると陽葵は「その調子」と言って頭をポンポンとした。

私がぎゅっと陽葵に抱きつくと、陽葵もぎゅっと抱き返してくれる。

「お前らなに女同士でイチャついてんの？」

後ろから呆れたように声をかけられた。

その声に私はドキッとして不安な気持ちを抑えつつ振り返る。

「…健ちゃん。」

「おっす、神崎。」

ニコニコとお日様のような笑顔で挨拶をしてくれた健ちゃん。

いつも通り……だ。

いつもの健ちゃんだ。

良かった。本当に良かった。

「…おはよ、健ちゃん。」

「プハッ、なに泣きそうになってんの？俺が無視するとでも思ってた？」

「……ちょっとだけ？」

「マジで⁉︎そんなことしないよ。また、前みたいに3人で仲良くしてこーぜ。な？」

「うん、ありがとう。健ちゃん。」

私は嬉しくて、コクン、コクンと激しく頭を縦に振った。

「アハハ。頭、振りすぎだって」と言って健ちゃんは私の頭を優しく撫でてくれる。

「健ちゃん、優しすぎる///」

「なに？惚れそう？その気になったら、いつでも戻ってきていーよ。」

健ちゃんはニシシ…と悪戯っ子のような顔で笑ってから、友達に呼ばれて教室を出て行った。

「ね？心配なかったでしょ？」

「うん。陽葵も健ちゃんも優しいね。大好きだよ。」

以前と変わらない関係を続けていけると分かり、私はホッと胸を撫で下ろした。