メガネの王子様
特別がいいんです
今日は終業式。
健ちゃんとは元通り仲の良い友達に戻れたけど、桐生とはまだ仲直り出来ていない。
今年、桐生に会えるのは今日で最後。
なんとしても仲直りしたい。
私は朝から気合いが入っていた。
「睡眠と食欲は生きる基本よ。そこがきちんと取れないと力なんて湧かないからねっ。」
そう陽葵に強く言われ、私は久しぶりに良く眠り、朝ご飯もきちんと食べてきた。
最寄りの駅を出て学校へ向かう途中で、珍しく陽葵と健ちゃんに会う。
「おはよ、陽葵、健ちゃん。」
私が元気よく2人に挨拶をすると、2人はとても嬉しそうに笑顔で挨拶を返してくれた。
「なに?気合い入ってるじゃん、萌香。」
「まぁね。今日、頑張って桐生と仲直りしてくるよ。」
「よしっ、その調子っ。頑張れ!萌香。」
「うん、ありがとう。」
私と陽葵が向かい合ってガッツポーズをしていると、健ちゃんが自転車を押しながらコホンッとワザとらしく咳払いをした。
「あ、のさ…、神崎に言っておきたい事があるんだけど。」
「なに、健ちゃん?」
「すごくカッコ悪くて言いにくいことなんだけど…。」
珍しく歯切れの悪い健ちゃん。
カッコ悪いこと?
健ちゃんがカッコ悪いときなんて無かったけど…なんだろ?
「うん?なに?」
「俺、神崎にひとつ嘘をついてたんだ。あの日…神崎が倒れたとき、保健室に運んだのは俺じゃなくて、桐生なんだっ。」
「えっ⁉︎」
「嘘ついててゴメンっ!」
健ちゃんが深々と頭を下げて謝った。
あの日、倒れた私を運んでくれたのは健ちゃんじゃなくて桐生だったの?
え?嘘…⁉︎
じゃあ、薄れていく意識の中で、桐生の香りだと感じたのは夢じゃなかったんだ。
桐生が私を助けてくれた…。
「ちょっと⁉︎萌香っ、あれ見て!」
突然、陽葵が私の腕を引っ張り、校門の方を驚いた顔で指を差しながら見て言った。
私は陽葵が指差す方を見てみる。
え…⁉︎
校門には女の子がたくさん集まっていて「キャー、キャー」と騒いでいた。
驚いたのは、その女の子達に囲まれていたのが、眼鏡を外した桐生だったから。
な、なんで?なんで眼鏡を外してるの⁉︎
イケメンバージョンでなんかいたらヤバイじゃんっ!
また嫌な思いするんじゃないの?
いったい、桐生は何がしたいの⁇
「萌香、行ってきなよ。」
そう言って陽葵は私の背中をポンッと押す。
「え?でもっ。」
「あいつ、神崎のことを待ってるんだから、行ってやれよ。」
健ちゃんがニッコリと笑いながら言った。
「ほら、早く」と陽葵と健ちゃんに言われ私は覚悟を決める。
「うんっ、行ってくる!」
私は気合いを入れて2人に返事をし、人集りが出来ている校門へと走って行った。