宛名のないラブレターをキミに
ゼラニウム―予期せぬ出会い―

1

「ここは下に『ば』がついているので已然形に――」



教室の中に柔らかく差しこむ陽射し。

どこからか漂ってくる花のいい香りが鼻腔をくすぐる。



私の横ではカーテンがそよそよと揺れ、
半分開いた窓からは風がふわりと舞い込んでくる。



生ぬるいがこの時期にはちょうどいい涼しさかもしれない。


なんて、働いていない頭で今にも落ちそうな瞼をどうにかしようと考える。



5限目の古典の時間。

それは眠さとの戦いだ。
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