宛名のないラブレターをキミに
「…陽菜ちゃんね。


寝不足になることなんてよくあるけど程々にね。
上から落ちてきたとき、心臓が止まるかと思ったよ。」


ってことはもしかして



「運んでくれたんですか…?」


さっきの困ったような顔からうっすらと笑顔を浮かべ、頷く王子。

絶対重かった…とか思うことはたくさんある。
でも今は

「ありがとうございました。


王…黒田先輩。」


これだけ伝えれば十分だと、そう思った。



顔を上げれば、さっきの顔が嘘のみたいな、

私の好きな太陽のような笑顔がそこにあった。




陽菜の胸の奥で、1回とくん、と何かが高鳴った。
その感情は何か、まだ誰にも分からない。
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