宛名のないラブレターをキミに
「はぁ…」
肩を上下に揺らす彼女は息も絶え絶えに図書室へと入っていく。

(たしか…ここらへんに置いたんだよなぁ…。)


あの本が誰か別の人に借りられるという最悪の事態を陽菜の頭をよぎる。

が、それはすぐに杞憂におわった。


「あった…」

昨日と同じようで、少し違う期待を込めてその本へと手をかける。
だが、そこに昨日の手紙はなかった。

(やっぱ持ち主が回収しちゃったのかな…。)


その事実に落胆し、ため息を1つついた陽菜。
珍しく本を読む気にもならず、肩を落とした陽菜は何も借りずに図書室を出て行く。


常連と化していた彼女が何も借りていかずに出て行く様子を、図書室のおじいちゃん先生は不思議そうに眺めていた。
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