運命は硝子の道の先に
「……見つけた」
学食奥のカウンター。外に面したその席は全面ガラス張りになっていて、いわゆるおひとり様が昼食をとるのによく使われている。今は講義中だから、細身の女の子が一人座っているだけだ。
「結衣」
「……、一花」
「らしくないことするよね」
「誰のせいだと思ってるの」
「……ごめん」
横に立つと、椅子に置いていた荷物を向こうの席にずらす。座ってもいいということか。
腰を下ろしても、結衣は口を開かなかった。ただ、窓の外の景色をぼんやりと見つめて、時折ペットボトルのミネラルウォーターを飲む。ここは私から何かを言うべきなのか。でも、何を言えば。
迷っているうちに、彼女は鞄を探って何かを取り出した。
「食べる?」
葡萄味のグミ。包装にはコラーゲンたっぷりの文字が躍る。
「……」
「別に毒なんか入ってないから、食べなよ」
「ん、ありがと」
コロコロとした見た目のそれを口の中に放り込む。程よい食感に、甘い果汁をそのまま飲み込んでいるような味。何だか、ほっとする。
「こういうときは糖分第一だから」
「うん。……結衣、ごめんね」
「何で謝るの。私が勝手に怒って、勝手に出ていったんだから」
「でも、ごめん」
答えは返ってこない。結衣はまだ黙って、外を眺めている。
目の前にはちょっとした広場があって、数名の学生がキャッチボールをしている。馬鹿みたいに明るい声、弾ける笑顔。講義がないからそうしているのだろうが、彼らはそれだけではない輝きをもっていた。きっと心から今を満喫している。
「私って弱いよね」
「……」
「蓮のこととは関係なく。流されやすいというか、逃げ腰なんだよね、いつも。分かってはいる、いるんだけど、変われない。ううん、変わらなくていいって結局逃げちゃってるのかも。呆れちゃうよね」
「うん、呆れちゃう」