甘い媚薬はPoison
「今日はいろいろと無理を言ってすまない。佐藤さんが調整してくれて助かったよ」
労いの言葉をかけると、佐藤さんは壁のスイッチを押して社長室のブラインドを下ろす。
嫌な予感がした。
ブラインドを下ろすということは、他の社員に見られたくないってことで……。
「どうして岸本さんは特別なんですか!あんな子……朝比奈さんに相応しくない!」
佐藤さんは拳を握り、声を荒らげる。
「相応しいとか相応しくないとか君には関係ないと思うが」
俺は佐藤さんに冷ややかな眼差しを向けた。
「……私じゃダメなんですか?」
佐藤さんは急に俺に抱きついてきて、すがるような目で俺を見て懇願する。だが、俺は愛梨が好きだし、彼女に心が動かされることはなかった。
「君には悪いけど、そういう対象として考えたことはないし、これからもそうなる可能性はない」
自分でも冷たいと思ったがキッパリと佐藤さんに告げると、彼女を自分から遠ざけた。
佐藤さんは悔しそうにギュッと唇を噛み締める。
これ以上の話は無用とばかりに俺は佐藤さんの横を通って社長室を出ると、昔よく愛梨達の家族と行った銀座にある寿司屋に向かった。
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