甘い媚薬はPoison
祖父のプレゼントに心から喜び、香水の瓶をまじまじと見つめる。
その日は私の十歳の誕生日で、世界的に有名な調香師だった祖父が香水を作って私にプレゼントしてくれたのだ。
香水の名前は『アイリ』。
私の名前にちなんで祖父が名付けた世界にひとつしかない香水――。


それから十二年後――。
「みんな集まってくれ。新しいプロジェクトを発表する」
オーダーメイドの紺のスーツに身を包んだ黒髪の男性が社員に声をかけると、皆が社長室の横にある大きなスクリーンの前に集まった。
彼は朝比奈蓮、二十六歳。日本でも有名なIT企業『ユニヴェール』の社長。
身長百八十二センチ。さらさらの黒髪に、シルバーフレームのメガネ。
漆黒の瞳が印象的な彼は日本の最高学府の大学を首席で卒業後、同じ大学の友人と共に会社を設立した。
ユニヴェールは六本木のランドマーク的な六十二階建てのビルにオフィスがあるIT企業で、インターネット広告事業とゲーム事業を展開している。
蓮くんが資本金一千万円で友人とふたりで始めた会社は、今では従業員数約百名、経常利益百億円を超える超優良企業となった。
二年前にマザーズ上場を果たし、アメリカの有名雑誌の『世界を変える百人』に選ばれたこともある頭脳明晰で有能な若手実業家である彼は、私の幼馴染み。
現在独身だが、超優良物件な彼を狙っている女性社員は多い。
かく言う私は、岸本愛梨。二十二歳、独身。身長は百五十六センチ、髪は天然の茶髪ロング。目はパッチリ二重で唇は小さく童顔だから、化粧をしていないと中学生に間違われる。
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