甘い媚薬はPoison
中学二年まで蓮くんとは家が隣で、赤ちゃんの頃からお世話になっていた。
蓮くん曰く、私のミルクやオムツの世話もしたとか。
昔は兄のように思っていたけど、兄弟じゃないんだって意識し始めた小三くらいからずっと彼のことを好きでいる。
でも、バレンタインや誕生日に告白しても、まともに相手にしてもらえなかった。
小さい頃の四歳という年の差は大きい。
どんなにおしゃれをして頑張っても、彼に女として見てもらえないのだ。
「現在、中学生のスマホの普及率は九割近い。そこで次のゲームは中学生の女の子をターゲットにする……って、岸本さん、ちゃんと聞いてるか?」
スクリーンにはゲームのコンセプトが映し出されていて、蓮くんが突然メガネのブリッジを上げて、うっとりと彼を眺めていた私を注意する。
「は、はい。ちゃんと聞いてます!」
ハッとしつつも、笑顔で返事をした。
メモも見ずに話をする彼にドキドキせずにはいられない。
特にあのキラッと光るメガネがいい。
蓮くんの知的さが引き立つ。
彼は経営だけではなく、ソフト開発でもリーダーシップを発揮していて、技術スタッフに細かい指示を出している。それだけじゃない。彼は社員全員の顔と名前を覚えているのだ。
技術者だけではなく、私のような事務方の人間も蓮くんの話を聞くのがうちでのルール。
それは皆で一丸となってソフトを作り上げるという社長である彼の考えによるもの。
技術を駆使して新しいものを創作するけれど、蓮くんは和を大事にする。
そういうところが好きだ。
顔だって、頭だって誰よりもいいけど、やはり彼の心に惹かれてしまう。