甘い媚薬はPoison
「髪は下ろしといた方がいいよ」
「えっ?」
意味がわからず首を傾げて杉山さんに聞き返すと、彼は困った顔をして自分のうなじに手をやって私に知らせた。
「うなじにキスマークついてる」
「嘘……」
予想もしてない答えが帰ってきて、なにも弁解出来ずに固まる。
キスマーク?
言葉の意味を理解するのに数秒かかった。
そんな私の様子を見て杉山さんはポツリと呟く。
「……朝比奈に見られたら睨まれるな」
杉山さんは私の髪に手を伸ばしてシュシュを取ると、私に手渡した。
「はい、これ。なにか話したいことがあれば相談に乗るから」
ポンと私の肩を軽く叩くと、杉山さんはコーヒーを持って自席に戻った。
相談……か。
私が悩んでるの、杉山さんにはわかるんだろうな。
根掘り葉掘り聞いてこないところが優しい彼らしい。
苦い想いで手の中のシュシュをじっと見つめる。
キスマークをつけた犯人はわかってる。
見られたのが杉山さんで良かったかもしれない。
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